ホルスタイン種去勢肥育牛においてアミノ酸バランス改善飼料給与によって窒素排せつが削減される

要約

配合飼料の粗タンパク質含量を下げて、バイパスアミノ酸を添加するアミノ酸バランス改善飼料をホルスタイン種去勢肥育牛に給与すると、飼養成績に影響なく、ふん尿への窒素排せつを15%以上削減可能である。

  • キーワード:肥育牛、ホルスタイン種去勢牛、窒素排せつ、バイパスリジン、バイパスメチオニン
  • 担当:畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

地球温暖化対策で温室効果ガス排出削減が課題になっており、畜産業においても対策が求められている。特に、ふん尿処理過程で発生する一酸化二窒素は二酸化炭素の298倍強力な温室効果ガスであり、その素となるふん尿中の窒素削減技術の開発が肉用牛でも求められている。
そこで本研究ではホルスタイン種去勢肥育牛に他の家畜で有用であったアミノ酸バランス改善飼料を供試して、ふん尿中の窒素削減効果と飼養成績への影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種去勢牛の肥育用アミノ酸バランス改善飼料は、粗タンパク質含量を少なくし(本試験では肥育前期17.2%から14.4%、肥育後期14.5%から11.4%)、減少するリジンとメチオニンを補うために、ルーメンで分解されないように加工したバイパスリジン、バイパスメチオニンを添加する(表1、表2)。なお、バイパスリジンとバイパスメチオニンの添加量は代謝リジンと代謝メチオニンが既存の配合飼料と同じになるように設計する。
  • 代謝体重あたりの窒素排せつ量は試験区で肥育前期で低い傾向、後期で有意に低くなり、ふん尿窒素排せつ量は対照区よりアミノ酸バランス改善飼料で15%以上低くなる(図1)。
  • CP摂取量を除き、飼料摂取量、増体、枝肉重量、肉質などの飼養成績は、アミノ酸バランス改善飼料を給与しても影響がない(表3)。
  • アミノ酸バランス改善飼料の原料価格は、既存の配合飼料の原料価格と同程度である。

成果の活用面・留意点

  • 窒素排せつ量の削減に伴い一酸化二窒素発生量も窒素排せつ量と同様の削減が見込まれる。
  • ペレット加工に適さないバイパスアミノ酸を使う時は、配合飼料の形状はマッシュにする。
  • ホルスイタン種去勢牛の肥育用飼料に活用できる情報で、黒毛和種のアミノ酸バランス改善飼料は現在検討中である。

具体的データ

表1 配合飼料の成分例,バイパスアミノ酸添加量の設計例,図1 ふん尿窒素排せつ量,
表3 肥育成績

その他

  • 予算区分:農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:畜産分野における気候変動緩和技術の開発)
  • 研究期間:2018~2020年度
  • 研究担当者:神谷充、山田知哉、樋口幹人、柴伸弥、今成麻衣
  • 発表論文等:Kamiya M. et al. (2021) Anim Sci J. 92:e13562