黒毛和種牛とホルスタイン種牛の筋肉内脂肪蓄積能力差に影響する要因

要約

黒毛和種の筋肉内脂肪細胞はホルスタイン種より大きく、脂肪細胞分化促進因子C/EBPβおよびC/EBPαの遺伝子発現が高い。ホルスタイン種の筋肉内脂肪細胞では、エネルギー代謝を促進するadiponectin発現量が高い。

  • キーワード:黒毛和種、ホルスタイン種、筋肉内脂肪細胞
  • 担当:畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛肉生産では、特にロース部位における筋肉内脂肪組織の蓄積が重要視されている。筋肉内脂肪の蓄積能力は牛品種によって大きく異なっており、筋肉内脂肪細胞の分化能力や、細胞内代謝の違いが影響していると考えられるが、詳細は不明である。そこで本研究では、筋肉内脂肪の蓄積能力の高い黒毛和種去勢肥育牛と、筋肉内脂肪蓄積能力の低いホルスタイン種去勢肥育牛を用い、筋肉内脂肪蓄積能力の品種差に影響している要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢肥育牛のロース筋肉内脂肪細胞のサイズは、ホルスタイン種去勢肥育牛より有意に大きい(図1)。
  • ロース筋肉内脂肪において、脂肪細胞内への余剰エネルギー蓄積を促進し細胞肥大化を制御する分化促進因子であるC/EBPβおよびC/EBPαの遺伝子発現量は、黒毛和種去勢肥育牛がホルスタイン種去勢肥育牛より有意に高い(図2)。
  • エネルギー代謝を促進するadiponectinの遺伝子発現量は、ホルスタイン種去勢肥育牛が黒毛和種去勢肥育牛より有意に高い(図2)。
  • ホルスタイン種去勢肥育牛の筋肉内脂肪は、黒毛和種去勢肥育牛より代謝活性が高くエネルギー消費が多い。両品種間で有意に異なる代謝物質は12種存在する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 黒毛和種牛とホルスタイン種牛の筋肉内脂肪蓄積能力の指標として活用できる。
  • 表1のメタボローム解析にはCE-TOFMSを用いている。

具体的データ

図1. ホルスタイン種および黒毛和種のロース筋肉内脂肪細サイズ,図2. ロース筋肉内脂肪組織における遺伝子発現比較 ,表1. ロース筋肉内脂肪組織のメタボローム解析結果

その他

  • 予算区分:交付金、文部科学省(科研費 18K05958)
  • 研究期間:2018~2021年度
  • 研究担当者:山田知哉、神谷充、樋口幹人
  • 発表論文等:Yamada T. et al. J. Vet. Med. Sci. (in press)