要約
黒毛和種の脂肪酸組成および繁殖形質において、個々のSNP効果の大きさを反映した適切なゲノミック評価法を利用することで従来のゲノミック評価法より正確な遺伝的能力評価ができる。
- キーワード : 機械学習、脂肪酸組成、繁殖形質、黒毛和種、ゲノミック評価法
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
黒毛和種の遺伝的能力評価法として実用化されているゲノミック評価法は数万以上の大規模なSNP情報を利用するが、現在主流となっている評価法(GBLUP法)ではSNPの効果はすべて等しいという前提がある。しかし、選抜対象となる形質に効果の大きな遺伝子が関与している場合、その効果の大きさをゲノミック評価法に反映させることで遺伝的能力の評価精度を向上できる可能性がある。そこで本研究では、黒毛和種の脂肪酸組成および繁殖形質を対象として、機械学習等の統計学的手法を用いてSNPの効果の大きさを推定するとともに、それらの効果を考慮した高度なゲノミック評価法を複数開発し、それらの遺伝的能力の評価精度を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 3県で繋養されている黒毛和種肥育牛3,191頭のSNP情報およびガスクロマトグラフィーで測定したオレイン酸および一価不飽和脂肪酸の記録から遺伝的能力を算出する。
- ガスクロマトグラフィーで測定したオレイン酸および一価不飽和脂肪酸では、kinship-adjusted multiple loci(KAML)法、BayesC法およびextreme gradient boos(XGB)法の遺伝的能力評価精度がGBLUP法よりも優れている(図1)。
- 家畜改良センターで繋養されている黒毛和種繁殖雌牛2,583頭のSNP情報および繁殖形質の記録から遺伝的能力を算出する。
- GBLUP法に比べて、初産分娩時日齢ではGaussian kernel(GK)法、XGB法およびsupport vector regression(SVR)法の遺伝的能力評価精度が優れており、分娩難易ではGK法およびSVR法の遺伝的能力評価精度が優れている(図2)。
成果の活用面・留意点
- 選抜対象とする形質や集団に応じて、SNP効果を適切に反映させた方法を選択することによって黒毛和種の遺伝的能力評価の精度を向上できる。
- XGB法、GK法およびSVR法は優性遺伝効果等の育種価以外の遺伝効果を含むため、育種価の推定精度が向上するとは限らない。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2022~2023年度
- 研究担当者 : 西尾元秀、荒川愛作、小林栄治、石井和雄、谷口雅章、大江美香、小山秀美、岡村俊宏、福澤陽生、一関可純(家畜改良セ)、井上慶一(宮崎大)、小川伸一郎、竹田将悠規(家畜改良セ)
- 発表論文等 :