要約
豚主要3品種について複数形質を同時に改良するために必要な発育・繁殖形質に関する遺伝的パラメーターは、品種間で大きな差はなく、産肉形質と繁殖形質間の遺伝相関は中程度以下である。
- キーワード : 豚、発育性、繁殖性、遺伝率、遺伝相関
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
わが国の養豚では雌系品種としてランドレース種および大ヨークシャー種が、雄系品種としてデュロック種がそれぞれ広範に供用されている。豚の発育性や繁殖性に係る形質には経済的に重要なものが複数含まれる。これら形質を同時に考慮した総合的な種豚群の育種改良を効率良く行うには、遺伝率や遺伝相関といった遺伝的パラメーターを正確に把握する必要がある。しかし、国内主要3品種について、複数の発育形質および繁殖形質を同時に取り上げた遺伝的パラメーターの推定例はない。そこで、本研究では豚の国内主要3品種を対象に、複数の発育・繁殖形質に関する包括的な遺伝的パラメーターに関する情報を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 遺伝率の推定結果に品種間で大きな差はみられない(表1)。とくに、産肉形質の推定遺伝率は0.4~0.5であるのに比べ、繁殖形質は0.2未満と総じて低い。
- 遺伝相関の推定結果に品種間で大きな差はみられない(表2、表3、表4)。遺伝相関の推定値は形質ペアによって大きく異なり、とくに繁殖形質間では強い負の相関から強い正の相関まで見受けられた。産肉形質と繁殖形質との間には弱いか中程度の相関が推定される。
成果の活用面・留意点
- 本成果は産肉・繁殖性にまたがる複数形質を同時に改良する際に必要となる基盤的知見である。
- 遺伝率や遺伝相関は集団に依存するため、集団ごとに推定結果の一致性を確認することが望ましい。
- 集団ごとに遺伝率を推定する場合、繁殖形質では少数のデータしかない場合は遺伝率の推定精度が低いため、選抜に用いる遺伝的パラメーターは本結果等の文献値を用いることが望ましい。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)、その他外部資金(JRA畜産振興事業)
- 研究期間 : 2022~2023年度
- 研究担当者 : 小川伸一郎、髙橋弘(グローバルピッグファーム株式会社)、佐藤正寛(東北大院農)
- 発表論文等 :
Ogawa et al.(2023)J. Anim. Breed. Genet. 140:607-623