低タンパク質飼料給与によりブタ骨格筋塩基性アミノ酸トランスポーター-1の発現は高くなる

要約

ブタに低タンパク質飼料を給与すると骨格筋の遊離リジン濃度は低く、塩基性アミノ酸トランスポーター-1のmRNA発現量が高い。

  • キーワード : ブタ、骨格筋、塩基性アミノ酸トランスポーター-1、遊離リジン
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

塩基性アミノ酸トランスポーター(Cationic amino acid transporter, CAT)は、ブタ用飼料の第一制限アミノ酸であるリジンならびにアルギニン、ヒスチジンを輸送する。ブタ骨格筋におけるCAT発現を理解することは、効率的なリジンの利用につながり、ブタの生産性の向上が期待できる。そこで、本研究では低タンパク質飼料給与がCAT-1のmRNA発現量に及ぼす影響を明らかにするとともに、発現量を制御する要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 5週齢のLWD交雑種の去勢オスブタを、対照区(粗タンパク質(CP)含量21%)および低タンパク質区(CP16%)に各6頭ずつ供試し、14日間飽食で飼養し、胸最長筋および大腿二頭筋を採取する。リアルタイムPCR法で各骨格筋のCAT-1のmRNA発現量を測定するとともに、各骨格筋の遊離アミノ酸濃度を測定する。
  • 低タンパク質飼料給与により胸最長筋と大腿二頭筋でCAT-1のmRNA発現量は対照区より高い(図1)。
  • 胸最長筋と大腿二頭筋の遊離リジン濃度は対照区より低タンパク質区で低い(表1)。
  • CAT-1のmRNA発現量を制御する要因を検討するため、C2C12培養骨格筋細胞をリジンあるいはアルギニンが欠乏した培地で24時間培養し、CAT-1のmRNA発現量を測定する(n=6)
  • C2C12培養骨格筋細胞において、培地中のリジン欠乏およびアルギニン欠乏により、CAT-1発現量は高くなる(図2)。
  • 骨格筋のCAT-1のmRNA発現量は低タンパク質飼料給与により高くなり、これは骨格筋の低い遊離リジン濃度によることが示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 本知見は、低タンパク質飼料給与がブタ骨格筋におけるCAT-1の発現量に及ぼす基礎的知見であり、ブタのアミノ酸栄養状態への適応に関する研究につながる。
  • 低タンパク質飼料が、タンパク質源飼料原料の割合を低くし、不足するアミノ酸を結晶アミノ酸で補充した飼料を指すことがあるが、本研究で使用した低タンパク質飼料は、不足するアミノ酸を補充していない。
  • 本研究は、塩基性アミノ酸トランスポーターのmRNA発現量を測定したものであり、タンパク質の発現量を測定した結果ではない。

具体的データ

図1 低タンパク質飼料がブタ胸最長筋および大腿二頭筋のCAT-1 mRNA発現量に及ぼす影響。,表1 低タンパク質飼料がブタ胸最長筋および大腿二頭筋の遊離リジンおよびアルギニン濃度に及ぼす影響。,図2 培地中のアルギニン欠乏およびリジン欠乏がC2C12筋管細胞のCAT-1 mRNAに及ぼす影響。

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2013~2022年度
  • 研究担当者 : 石田藍子、芦原茜、中島一喜、勝俣昌也(麻布大)
  • 発表論文等 : Ishida A. et al. (2023) Anim. Sci. J. 94:e13861 doi: 10.1111/asj.13861