要約
ニワトリ7日胚の生殖巣始原生殖細胞(gPGC)を孵卵2.5日胚に1細胞移植すると、gPGCの生殖巣への移住能および増殖能を示す割合は雄で37%および23%であり、雌で24%および8%である。
- キーワード : ニワトリ、生殖巣始原生殖細胞(gPGC)、移住能、増殖能、1細胞移植
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ニワトリ胚の生殖巣始原生殖細胞(gPGC)を用いた遺伝資源保存では、凍結保存したgPGCを宿主胚に移植し、生殖系列キメラを介して個体再生が可能である。しかし、gPGCが生殖巣の分化の影響を受けていることから、宿主胚へ移植後の生殖巣への移住能、増殖能および配偶子形成能を含むgPGCの発生能はばらつきが大きい。gPGCを用いた確実かつ効率的に遺伝資源を保存し、個体再生するためには、gPGCの発生能の特徴を明らかにし、発生能の高いgPGCを利用することが重要である。これまでは、gPGCを集団で宿主胚に移植することによりその発生能が評価されていたが、移植された個体により移住能および増殖能のばらつきが大きかった。そこで、本研究ではgPGCがもつ発生能を明らかにするため、gPGCを宿主胚へ1細胞移植し、移植後の生殖巣への移住能および増殖能を解析することで、gPGCにおける遺伝資源としての発生ポテンシャルを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 白色レグホン7日胚gPGCをロードアイランドレッド2.5胚の血管内へ1細胞移植し、移植5日後における生殖巣への移住能および生殖巣内での増殖能を確認することで、これまで行われたことのない1細胞移植による個々のgPGCの発生ポテンシャルを評価する。
- 雌雄の7日胚gPGCそれぞれ100個を1個ずつ宿主胚200個に移植した5日後の移住能および増殖能を持つ割合を示す(図1)。雄gPGCは37%および23%、雌gPGCは24%および8%が移住能および増殖能を示す(図1)。このように、雌雄で増殖能を有するgPGCの割合が異なる。
- 雌雄の増殖能を有するgPGCにおけるそれぞれの細胞の増殖率は、個々のgPGCでばらつきが大きく、増殖率が高いものと低いものが混在する(図2)。
- ニワトリ7日胚の雌雄のgPGCは雌雄および個々のgPGC間で発生ポテンシャルが異なるヘテロな細胞集団である。
成果の活用面・留意点
- 7日胚gPGCは宿主胚生殖巣への移住能および増殖能を有することから、遺伝資源保存へ利用可能である。
- 7日胚gPGCの移植後の移住能および増殖能は、雌雄および個々の細胞間でばらつきがあるため、gPGCを遺伝資源保存・個体再生に利用する際には、多くのgPGCの移植が必要になる可能性がある。
- 本研究成果は白色レグホンの7日胚gPGCをロードアイランドレッド2.5日胚に移植した結果を示す。そのため、他品種・系統やドナーgPGCと宿主胚の組み合わせ、7日胚以外のgPGCにおける移住能および増殖能は異なる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2022年度
- 研究担当者 : 中島友紀、田上貴寛、田島淳史(筑波大)
- 発表論文等 :
Nakajima Y. et al. (2023) J. Poult. Sci. 60: jpsa.2023028