要約
市販の腟温度測定センサを用いた分娩前乳牛の腟温度測定とカメラによる分娩時刻、胎盤排出時間の検出において、胎盤排出時間が遅い群は分娩前の腟温低下から娩出までの時間が短く、娩出前の腟温上昇が観察されない。腟温測定は胎盤停滞牛の分娩前検出に活用できる可能性がある。
- キーワード : 乳牛、腟温測定、分娩経過時間、胎盤排出、胎盤停滞
- 担当 : 畜産研究部門・高度飼養技術研究領域・繁殖システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
市販の腟温度測定センサが牛の分娩予測のために活用されている。このシステムの活用による難産等の分娩事故の低減の有効性が報告されている。難産以外に周産期の重要な疾病の一つとして胎盤停滞があり、発症により分娩後の乳量低下や繁殖機能回復の遅延など生産性への影響は大きい。しかしながら、胎盤停滞の分娩前予測はこれまで困難であり、血液採取などを伴わない低侵襲的かつ簡便な検出、予測技術の開発が求められている。
そこで、本研究では腟温変化によって分娩前に胎盤停滞を予測することを目的に、乳牛(ホルスタイン種)における市販の腟温度測定センサ用いた分娩前腟温測定とカメラ撮影から検出した娩出時間、胎盤排出時間から、腟温変化と分娩経過時間、胎盤排出時間の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 市販の腟温度測定センサでホルスタイン種の腟温を連続測定した。腟温低下閾値を過去2日間平均値の-0.4°Cに設定した場合、腟温低下通報から娩出までの時間(以下、分娩経過時間)や自然分娩率に産歴による差は認められない(表1)。
- 正常な胎盤排出時間(<8時間)の個体について分娩経過時間と胎盤排出時間の関係を解析したところ相関は認められない(図1)。
- 胎盤排出時間を0-4時間、4-8時間、8-12時間、>12時間(=胎盤停滞)と分類した場合、分娩経過時間が短いほど、胎盤排出時間が長くなる(図2)。
- 分娩48時間前の腟温と比較した相対腟温度を算出し胎盤排出時間別にその変化を解析したところ、通常分娩で認められる分娩前の上昇が胎盤停滞個体では認められない。胎盤停滞牛は、特徴的な腟温変化を示すことから、腟温測定結果を胎盤停滞牛の分娩前検出に活用できる可能性がある(図3)。
成果の活用面・留意点
- 公的研究機関や普及センターなどの研究や指導に活用できる。
- 本結果は市販の腟温度測定センサ(牛温恵)を用い、閾値を-0.4°Cに設定した結果である。
- 本結果はホルスタイン種の結果で、他品種での検討は行っていない。
- 分娩誘起処置を行った場合の検討は行っておらず、結果が異なる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)、民間資金等(畜産ニューテック研究調査助成)
- 研究期間 : 2021~2023年度
- 研究担当者 : 阪谷美樹、久保田海雄、三輪雅史、芳賀聡(東北大)
- 発表論文等 : Sakatani M, Kubota K, Haga S, Miwa M. (2024) J Reprod Dev 70:272-278
doi.org/10.1262/jrd.2024-012