近縁種テオシント由来の耐湿性遺伝子を持つトウモロコシ新品種「那交919号」

要約

「那交919号」は近縁種テオシント由来の耐湿性遺伝子Qft-rd4.07-4.11をヘテロで持つ中生のF1品種である。関東・東山地域での販売量が多い同じ早晩性の市販品種「KD731」に比べて、湿害が発生しやすい条件での生育が良好である。

  • キーワード : 耐湿性、湛水・還元耐性、テオシント、トウモロコシ、飼料作物育種
  • 担当 : 畜産研究部門・畜産飼料作研究領域・飼料作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

サイレージ用トウモロコシは粗飼料としての収量性と栄養価に優れるが、耐湿性が低いため水田転換畑等への作付けが十分に進んでいない。優れた耐湿性を持つ飼料用トウモロコシを新たに導入することで、水田転換畑や水田不作付地の活用を通した飼料自給率の向上が期待される。そこで、近縁野生種テオシントが持つ耐湿性関連形質の1つ「湛水・還元耐性」に関与する遺伝領域をヘテロで持つF1品種を作出し、水田転換畑等でも栽培可能なトウモロコシ品種の普及を目指す。

成果の内容・特徴

  • 「那交919号」(図1)は自殖系統「Na113」を花粉親、「Na102」を種子親とした交雑一代雑種である。「Na113」は、フリント系列の自殖系統「Na50」にテオシントの湛水・還元耐性の遺伝子(Qft-rd4.07-4.11)を含む染色体領域を、連続戻し交配により導入した系統である。「Na102」はデント系列の自殖系統である。
  • 「那交919号」の絹糸抽出期は「KD731」より1日早いことから、府県での早晩性は「KD731」と同じ"中生"である(表1)。乾総重は「KD731」より"やや少ない"が統計上の有意性はなく(表1)、湛水処理を行った圃場においては、乾雌穂重が「KD731」に比べ約19%多い(表2)。倒伏および折損抵抗性は「KD731」より"劣る"(表1)。
  • ごま葉枯病抵抗性は「KD731」より"やや劣る"が、栽培上の欠点になるほどではない。黒穂病抵抗性は「KD731」より"やや優れ"、根腐病抵抗性は「KD731」並である(表1)。
  • 採種量(精選種子重)は、育成地の隔離圃場において雌雄畦比3:1の条件で227kg/10aである。

成果の活用面・留意点

  • 東北南部以南の、湿害が発生しやすい水田転換畑などでの春播き栽培に適している。
  • 倒伏および折損に対する抵抗性は「KD731」より"劣る"ので、倒伏・折損が発生しやすい圃場での栽培は避ける。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:栄養収量の高い国産飼料の低コスト生産・利用技術の開発)
  • 研究期間 : 2016~2021年度
  • 研究担当者 : 玉置宏之、三ツ橋昇平、菅原幸哉、間野吉郎、今瀬諒司
  • 発表論文等 : 玉置ら「那交919号」品種登録第30404号(2024年8月19日)