要約
四倍体のフェストロリウム「なつひかり」は既存のフェストロリウム品種の中で最も越夏性に優れ、初期生育も良い。特に夏枯れが起こる地域での越夏後収量性が「アキアオバ3」よりも優れ、東北以西の寒冷地から温暖地が適地として想定され、採草を主体とした複数年利用を可能とする。
- キーワード : フェストロリウム、採草用、越夏性、飼料作物育種
- 担当 : 畜産研究部門・畜産飼料作研究領域・飼料作物育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
温暖化に伴い、近年本州以西では、多年利用の寒地型イネ科牧草の夏枯れが問題になっている。そのため、イタリアンライグラスの極長期品種「アキアオバ3」よりもいもち病抵抗性および越夏後の収量性、永続性に優れ、寒冷地から温暖地においては採草での2-3年の利用を可能にする四倍体のフェストロリウム品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「なつひかり」はイタリアンライグラス極長期品種「アキアオバ3」の育成時の途中の材料より越夏性等により選抜し合成品種法により育成された四倍体のフェストロリウム品種である。「なつひかり」はフェスク由来ゲノムの一部を持つことが明らかになっており、品種登録における農林水産植物の種類は「フェストロリウム」で登録した。
- 多年利用を想定して行った5場所での試験において年間乾物収量は、「アキアオバ3」と比較して、102-106%となり高い(図1)。
- 越夏後(8月以降)の収量合計が「アキアオバ3」と比較して108-189%と多収である(図2)。育成地において、既存のフェストロリウム品種の中で最も初期生育と越夏後の草勢に優れ(図3)、暖地での長期利用では、盛夏期の3番草の収量が、2場所5試験の平均で「アキアオバ3」と比較して137%と多収である(表1)。
- 接種検定によるいもち病および冠さび病の抵抗性は「アキアオバ3」と比較して高い傾向にある(表1)。
- 出穂始めは、「アキアオバ3」、「東北1号」と同程度で「那系1号」より7日程度遅い(表1)。
- 多回刈での乾物収量は、播種年を含む年間の合計で「アキアオバ3」と比較して112%、ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」と比較して118%と多収である(表1)。
- 採種性は、採種量で「アキアオバ3」と比較してやや劣るが、「那系1号」より優れる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 東北以西の寒冷地から温暖地が想定される適地であり、採草を主体とした多年利用を見込む。
- 暖地においては、イタリアンライグラスの(極)長期と同様の栽培体系で、梅雨明けまで利用できる。
- 採草を主体とする草地で使用するが、放牧についても適性があると想定される。
- 越夏性に優れるが、夏季の極端な乾燥時や生育が停滞する高温が続く時の刈り取りは避ける。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産分野における気候変動対応のための研究開発:温暖化の進行に適応する品種・育種素材の開発、イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2014~2024年度
- 研究担当者 : 清多佳子、上山泰史、内山和宏、田村健一、岡部郁子、江口研太郎、山口貴史、荒川明、笹谷孝英
- 発表論文等 : 清ら「なつひかり」品種登録出願公表第36445号(2024年10月24日)