要約
焼成した豚肉から抽出した揮発成分を液性に基づき分画すると、どの画分も「豚肉らしい匂い」を呈さない。「豚肉らしい匂い」の発現には単一の分画に含まれる成分だけでは不足である。
- キーワード : 豚肉、揮発成分、評価用語、分析型官能評価
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉品質グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
豚肉の好ましさの構成要素に「豚肉らしい、良い匂い」があると考えられている。この匂いを評価および改良するためには責任成分の同定が必要であるが、未だ同定には至って居ない。
豚肉に含まれる「豚肉らしい、良い匂い」の構成成分を明らかにするためには、豚肉中の揮発成分を適宜の方法で分画してそれぞれの匂い特性を調べ、「豚肉らしい匂い」成分が単一の分画に存在するか、あるいは複数の分画に散在するかを調べることが有効な手段の一つである。本成果では、焼成豚肉からエタノール抽出した揮発成分を液性に基づき分画したものについて、これら分画の匂いがどのような用語で表現される特性を有するか、分析型官能評価に基づく結果を示す。
成果の内容・特徴
- フライパンで焼成した豚胸最長筋をエタノールで抽出後、匂い成分の分画において一般的に用いられる液性に基づく方法で分画することで、強酸性画分、脂肪酸除去強酸性画分、弱酸性画分、および中性画分を得る(図1)。
- これら画分について、容易に匂いを感じる「標準量」の0.1倍、1倍、10倍、および100倍量を評価サンプルとし、食肉官能評価用語集(農研機構式)から選択した39の評価用語でCheck-All-That-Apply法による分析型官能評価を行った結果、感知された匂いは表1に示す19語で表現される(表1)。
- 全ての画分において、39の評価用語に含まれる「豚肉の匂い」の選択回数は極めて少なく(表1)、選択確率も0.01%未満であったため、ほとんど感知されないと判定できる。
- 各画分について段階的に量を増加させた場合に、各用語で示す匂いが感知される確率は画分ごとに異なる(図2)。オフフレーバーは強酸性画分に、良いイメージの匂いは強酸性脂肪酸除去画分で多く感じられる。
- どの画分も「豚肉の匂い」は呈さないことから、「豚肉らしい匂い」は単一の分画に含まれる成分だけでは発現しないと結論できる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は豚肉の「良い匂い」やオフフレーバーの責任成分を特定し改良するための基礎的資料となる。
- 図で示されている「豚の匂い」は「豚肉らしい匂い」とは異なり、家畜としての「豚の匂い」を指している。
- 本成果で用いたサンプルは焼成した豚胸最長筋1個体分のみであることから、複数の部位および個体で同様の検証を行うことが必要である。
- 本成果は聖徳大学人間栄養学部において選抜と訓練を受けた分析型官能評価パネルにより実施したものである(聖徳大学倫理委員会承認、H28U007号)。
- 分析型官能評価を行う際には匂いと用語の関係について訓練を行うことが必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(先導プロジェクト)
- 研究期間 : 2016~2020年度
- 研究担当者 : 佐々木啓介、渡邊源哉、中島郁世、本山三知代、翠川美穂(聖徳大)、荒井紗代子(聖徳大)、林徹(聖徳大)、小林正人(家畜改良事業団)
- 発表論文等 : 翠川ら(2024)日豚誌、61:42-51