Murf1は骨格筋筋原線維内のミオシン置換割合を変化させる

要約

骨格筋特異的に発現するユビキチンリガーゼMurf1はミオシンアイソフォーム依存的に筋原線維を構成するミオシン分子の置き換わりを促進する。

  • キーワード : 骨格筋、筋原線維、ミオシン、ユビキチンリガーゼ
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉品質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

家畜生体内での骨格筋組織の性状は食肉の品質および量を反映する。骨格筋組織を形成する筋線維は筋収縮を担う筋原線維で満たされているため、骨格筋組織は筋原線維数が増えることで肥大し、筋原線維数が減少することで萎縮する。しかし、筋原線維がどのように形成され、維持し、分解されているのか不明な点が多い。一方、ユビキチンプロテアソーム系においてユビキチンリガーゼが筋原線維を構成するタンパク質を認識し、分解することで骨格筋組織が萎縮すると考えられている。そこで本研究では、筋原線維の主要なタンパク質であるミオシン(Myh)とそのユビキチンリガーゼであるMurf1に着目し、筋原線維内ミオシンの動態を解析することで筋原線維の維持機構を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 筋原線維内に組み込まれたミオシンを可視化するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合したミオシンの各アイソフォーム(GFP-Myh1、GFP-Myh3、GFP-Myh4、GFP-Myh7)を発現するプラスミド、赤色蛍光タンパク質(Cherry)を融合したMurf1(Cherry-Murf1)、および対照としてCherryのみを発現するプラスミドを作製する。鶏胚より調製した骨格筋細胞に上記のプラスミドを導入し、GFP-MyhとCherry-Murf1の両方が陽性である骨格筋細胞を試料とする。蛍光顕微鏡下において筋原線維に組み込まれたGFP-Myhを観察することができる。骨格筋細胞で発現するGFP-Myh4の蛍光を退色させ、その後蛍光回復するまでの時間を測定することで、筋原線維内のミオシン置換に要する時間を求める(蛍光退色後蛍光回復法:図1)。
  • GFP-Myh4およびCherry-Murf1、あるいはGFP-Myh4およびCherryを共発現した骨格筋細胞を試料として蛍光退色後蛍光回復法を行う。蛍光退色後の回復時間と相対的蛍光強度を測定しグラフとして示す(図2)。
  • Cherryを発現させた骨格筋細胞と比べると、Cherry-Murf1を過剰発現させた骨格筋細胞のGFP-Myh3およびGFP-Myh4の置換割合は有意に高い値を示すが、GFP-Myh1およびGFP-Myh7では有意差がない(表1)。
  • Murf1がGFP-Myh3およびGFP-Myh4アイソフォーム選択的にミオシンの置き換わりを調節している可能性が考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 細胞内で目的のタンパク質を強制発現させた系の実験である。また、モデル動物としてニワトリ胚由来の培養骨格筋細胞を使った試験である。
  • Murf1が特定のミオシンアイソフォーム選択的にミオシンの動態を調節している理由は不明であるので、さらなる検討が必要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2019~2024年度
  • 研究担当者 : 尾嶋孝一、室谷進、上仲恵美(北大)、鈴木貴弘(九大)、小林謙(北大)、西邑隆徳(北大)
  • 発表論文等 : Uenaka E, Ojima K. et al. (2024) In Vitro Cell Dev Biol Anim. 60:748-759