要約
ブタゲノム中に存在するブタ内在性レトロウイルス(PERV)コピー数の遺伝性の評価から、PERVコピー数が通常のメンデル遺伝に従わない可能性があり、そのような配列の低減を目的とした改良にはゲノム編集のような技術の適用が効果的である。
- キーワード : ミニブタ、内在性レトロウイルス配列、臓器移植、遺伝率、コピー数多型
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ブタ(Sus scrofa)は、ヒトへの臓器移植用の動物として期待されているが、ゲノム中にあるブタ内在性レトロウイルス(PERV)がヒトの細胞に感染する可能性があるため、移植用ブタのコピー数はできる限り少ないことが望ましい。ベトナム在来豚は小型であるため、ヒト用臓器製造に適しているだけでなく、PERVコピー数が他のミニブタ品種よりも少ない。臓器移植の際のより一層のリスク低減のためにも、PERVコピー数の少ない個体が求められている。
そこで、本研究ではベトナム在来豚のPERVコピー数の遺伝性を検討するとともに、PERV低減を目的とする育種集団を造成し、PERVコピー数低減の育種の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ベトナム15箇所からサンプリングした90頭のベトナム在来豚においてPERVを構成する4つの遺伝子(gag、pol、envA.C、envB )のコピー数の遺伝率が0.27から0.71であることから、PERVコピー数は完全なメンデル遺伝でない(表1)。
- イエンバイ省の在来豚のPERVコピー数が平均的に少ない既報の結果に基づき、イエンバイ省の在来豚を基礎豚にPERV低減育種集団を構築(図1)したが、PERVコピー数低減の3世代育種においてもコピー数の低減が認められない(表2)。
成果の活用面・留意点
- PERVコピー数の遺伝率は高いにも関わらず、その低減育種においては従来の選抜育種が有効に働かない点から、ゲノム編集等の技術の適用が効果的である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)、持続可能開発目標達成支援事業)
- 研究期間 : 2014~2022年度
- 研究担当者 : 荒川愛作、Thanh-Nhan T. GIANG(ベトナム国立畜産研究所)、Can V. TA(ベトナム国立畜産研究所)、石原慎矢(日獣大)、岡村俊宏、Thanh Q. DANG-NGUYEN、Dai V. NGUYEN(ベトナム国立畜産研究所)、Lan D. PHAM(ベトナム国立畜産研究所)、菊地和弘、谷口雅章
- 発表論文等 : Giang TNT. et al. (2024) Anim. Scie. J. 95:e70002
doi.org/doi:10.1111/asj.70002