要約
母豚の代表的な繁殖形質である分娩時の一腹生存産子数について、無償利用可能な気象観測記録を活用し新たに開発した遺伝的能力評価モデルを用いることで耐暑性を改良できる。
- キーワード : 豚、暑熱、生存産子数、気象観測記録、遺伝的能力評価
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜モデル化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
わが国では全国各地で豚が飼養されている。豚は一般に暑熱に弱いとされ、繁殖成績は高温による暑熱負荷の影響を受けると考えられる。現在進行している温暖化への対策の一環として、耐暑性に関する育種手法の開発が期待されている。本研究では、温暖化に適応した豚育種手法の開発に資するため、農場最近傍地点における無償利用可能な気象庁気象観測記録を活用した豚の耐暑性に関する遺伝的能力評価モデル(以下、リアクションノルムモデル)を新たに開発する。
成果の内容・特徴
- 種付日の最高気温が16.6°Cを上回ると生存産子数が低下するとしたプラトー線形折れ線回帰にもとづくリアクションノルムモデルを用いたデータ解析により、暑熱負荷に反応する遺伝的能力に関する相加的遺伝分散が推定される(表1)。暑熱負荷への反応性に遺伝的な個体差が存在するとともに、生産データを用いて当該の遺伝的能力評価が可能である。
- 暑熱負荷に反応する遺伝的能力の評価精度は決して高くはない一方で、同一母豚の複数産次にわたる分娩成績や血縁個体の記録も大規模に収集することにより、暑熱負荷に関する部分の遺伝的能力の評価精度を高めることが可能である(図1)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は温暖化を想定した効率的な豚育種改良における基盤的知見を提供する。
- 既存の生産データに無償利用できる気象観測記録を結合して実施できるため、得られた成果について、コスト効率の高い現場転用が即座に可能である。
- 代表的な雌性繁殖形質である分娩時の一腹生存産子数を対象としたものであり、暑熱負荷に対する遺伝的な個体差をより強く反映する別形質が存在する可能性がある。
- ランドレース種を対象としたものであり、他品種や同一品種の異なる集団では結果が異なる可能性があるため、対象ごとに同様の検討を行う必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 民間資金等(日本中央競馬会畜産振興事業)
- 研究期間 : 2022~2023年度
- 研究担当者 : 小川伸一郎、岡村俊宏、福澤陽生、西尾元秀、石井和雄、木全誠(株式会社シムコ)、富山雅光(株式会社シムコ)、佐藤正寛(東北大院農)
- 発表論文等 : Ogawa S. et al. (2024) J. Anim. Breed. Genet. 141:656-667