要約
産卵鶏への慢性的な暑熱曝露は腎臓の機能低下を引き起こすが、腎機能低下は尿毒素インドキシル硫酸の全身及び腎臓への蓄積を誘導し、これがさらなる腎機能低下を引き起こす。
- キーワード : 産卵鶏、暑熱曝露、腎臓、尿毒素
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
環境温度の過度な上昇の鶏卵生産への影響としては、産卵量の低下に加え、卵殻質悪化・卵殻厚低下による破卵率増加が挙げられる。産卵鶏においては、暑熱曝露により卵殻形成に必須なミネラル類の代謝を担う腎臓の機能低下が起こり、これが産卵量や卵殻質に悪影響を及ぼしていると考えられる。一方、ヒトでは腎障害の進行に腸内細菌の作る毒素(尿毒素)が関与することが明らかになっている。尿毒素は、トリプトファンやチロシン等のアミノ酸の腸内細菌による分解と、肝臓での代謝により生成し、通常は腎臓で濾過され体外へ排泄される。しかし、腎機能が低下すると、全身及び腎臓に蓄積し、細胞障害を誘導することでさらなる腎機能低下を引き起こす。そこで、本研究では、慢性暑熱環境下の産卵鶏の腎臓における代表的尿毒素であるインドキシル硫酸の蓄積と、これによる腎障害誘導について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 27週齢のボリスブラウン(赤玉系産卵鶏)に対して、慢性的に暑熱曝露(32°C、Rh55-60%、4週間、適温条件24°C)すると、産卵率、日産卵量、卵殻強度および卵殻厚が低下する(表1)。また、腎障害の指標である血中クレアチニン濃度は上昇する(表1)。
- 暑熱曝露により、尿毒素インドキシル硫酸の濃度は血中及び腎臓で増加し、腎臓におけるインドキシル硫酸の取り込み及び排泄を担う輸送体の遺伝子発現量も上昇する(図1)。
- 腎臓に蓄積したインドキシル硫酸は、リガンドとして、アリール炭化水素受容体(環境汚染物質であるダイオキシン類の受容体)を活性化し、下流の遺伝子(CYP1A4及びCYP1B1)の発現を誘導する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 暑熱環境下の産卵鶏の腎臓における尿毒素蓄積についての基礎的な知見である。
- 産卵ピークの産卵鶏における一定温度の慢性的な暑熱曝露試験の結果である。
- 種々の尿毒素のうち、本研究では代表的なインドキシル硫酸の蓄積を明らかにしている。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)、環境省(環境研究総合推進費)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 原文香、大津晴彦
- 発表論文等 : Nanto-Hara F. and Ohtsu H. (2024) Sci. Rep. 14, 23213