要約
飼料摂取量当たりのメタン産生量が少なく、第一胃液中のプロピオン酸濃度が高いホルスタイン種泌乳牛に特徴的に多く存在する14種類の第一胃内細菌群を特定した。このうち、Prevotella lacticifex菌は、プロピオン酸前駆物質の産生割合が高く、生菌材としての活用が期待される。
- キーワード : 乳牛、メタン、ルーメン、プロピオン酸、プレボテラ属細菌
- 担当 : 畜産研究部門・乳牛精密管理研究領域・乳牛精密栄養管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
反芻家畜の胃内発酵で生じるメタンの排出量は、農業分野における温室効果ガス発生量の約4割を占めることから、削減が求められている。反芻家畜生産において、メタン低減と生産性向上の両立を図るためには、第一胃内発酵でメタン産生と拮抗関係にあるプロピオン酸の産生を増加させることが重要であり、プロピオン酸産生を増強する生菌資材などの開発が期待される。飼料摂取量あたりのメタン産生量は個体差が大きいことが知られている。
そこで、本研究ではホルスタイン種泌乳牛13頭について、メタン産生量やプロピオン酸濃度などのルーメン発酵指標に基づいた主成分分析により2つのグループに分け(高および低メタングループ)、乳生産との関係を調べる。さらにルーメン微生物相を比較することで生菌資材候補となる微生物を特定し、分離して機能を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 高および低メタングループ間で、飼料摂取量、乳量、乳成分に差はないが、低メタングループは可消化乾物摂取量あたりのメタン産生量が少なく(43.2L/kg vs. 36.9L/kg)、最大でメタンが約2割少ない個体を含む(表1)。また、乾物消化率が高く、酪酸濃度は低く、プロピオン酸濃度は高い傾向を示す(16.3% vs. 23.0%)。
- 細菌群集構造はグループ間で異なり、低メタングループにはPrevotella属(平均15.4%)およびSuccinivibrio属(平均7.4%)など14種類の系統型が特徴的に多く存在する(表2)。
- 低メタングループに特徴的なPrevotella属の系統型と一致する新規細菌種(P. lacticifex)を分離し、グルコースを基質として培養した時の発酵産物を調べると、コハク酸、リンゴ酸、および乳酸を含めたプロピオン酸前駆物質を高い割合で産生する(図1)。
成果の活用面・留意点
- 乳用牛のメタン排出削減や飼料利用性の改善に資する生菌資材としての開発が期待される。
- 本菌が牛第一胃内微生物相において高い存在比率を維持するために、胃内での増殖条件を明らかにする必要がある。
- 本研究ではルーメン微生物相のうち、プロトゾア密度は乾物摂取量あたりのメタン産生量への直接的な関連は確認できなかったものの、発酵産物の構成比に影響することで、間接的にメタン産生量に影響を及ぼしていると考えられる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)、農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:畜産分野における気候変動緩和技術の開発)
- 研究期間 : 2018~2024年度
- 研究担当者 : 真貝拓三、瀧澤修平、藤森美帆、永西修、樋口浩二、池山菜緒(理研JCM)、熊谷真彦、大森英之、坂本光央(理研JCM)、大熊盛也(理研JCM)、三森眞琴
- 発表論文等 :