要約
乳用牛の蹄の健全性を示す蹄冠スコアの遺伝率は0.03程度であり、遺伝的能力評価が可能である。蹄冠スコアは遺伝的に悪化傾向にあり、蹄の健全性を改善する方向へ遺伝的改良を進める必要がある。
- キーワード : 乳用牛、蹄の健全性、蹄冠スコア、育種改良
- 担当 : 畜産研究部門・乳牛精密管理研究領域・乳牛精密栄養管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
乳用牛の供用期間の短縮が問題となっている。肢蹄の故障は乳用牛の除籍理由の1つであり、乳量や繁殖性の低下を引き起こし、治療費や淘汰リスクの増加など経済損失につながる。蹄の健全性の改善は、肢蹄の故障を減らすことで意図しない除籍を減らし、長命連産性を高め、生涯生産性の向上に貢献することが期待される。蹄の健全性を示す形質として、乳用牛群検定において月に1度、蹄冠スコアのデータが収集されている。蹄冠スコアは、後肢の赤みや腫れの程度を5段階(スコア1:良好~スコア5:重篤)で測定したものである(図1)。蹄の健全性の改善に向けた、蹄冠スコアの遺伝的能力評価には、その遺伝的特性を明らかにする必要がある。そこで、乳用牛群能力検定で収集された初産から3産までの蹄冠スコアの記録を用いて、蹄冠スコアに影響を及ぼす環境要因を調査するとともに、その遺伝的特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 蹄冠スコアの頻度は、スコア1(良好)が最も高く、スコアが高いほど低い(図2)。産次が増えるほどスコア1の頻度は低く、スコア3以上の頻度が高い。
- 牛群規模、飼養形態、産次・検定時月齢、検定月、泌乳ステージは蹄冠スコアに影響を及ぼす環境要因である。いずれの産次でも、月齢に伴い蹄冠スコアは高くなり、蹄の健康状態が悪化する(図3)。
- 蹄冠スコアの遺伝率は0.03程度であり、遺伝的能力評価が可能である。
- 蹄冠スコアの遺伝的トレンドは、種雄牛、雌牛ともに上昇し、遺伝的に悪化傾向にある(図4)。
成果の活用面・留意点
- 蹄の健全性の遺伝的改良指標として、蹄冠スコアの利用が期待できる。
- 蹄冠スコアの蹄の健全性の改善へのより効果的な利用のために、肢蹄に関連する体型形質、在群性形質、繁殖性形質、生産形質など他の改良形質との遺伝的な関連性を調査する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、民間資金等(日本中央競馬会畜産振興事業)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 齋藤ゆり子、西浦明子、山崎武志、山口茂樹(家畜改良事業団)、舘林亮輝、佐々木修、佐藤正寛(東北大院)
- 発表論文等 : Saito Y. et al. (2024) Anim. Sci. J. 95:e70014