ウシ精液凍結用希釈液への還元型グルタチオン添加は体外受精成績を改善する

要約

ウシ精液の凍結用希釈液へ還元型グルタチオンを添加することにより、凍結-融解後の精子を体外受精に用いた際の前核形成、卵割・胚発生率、および胚の質が改善する。

  • キーワード : 雄ウシ、凍結精液、抗酸化剤、体外胚生産
  • 担当 : 畜産研究部門・乳牛精密管理研究領域・乳牛繁殖性向上グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

凍結-融解に伴う細胞傷害は精子の受精能や抗酸化能の低下を引き起こすため、雄ウシ個体間での精液の耐凍性や受胎性のばらつきの原因となっている可能性がある。そこで、受胎性の安定したウシ凍結精液を生産する技術を開発するために、精子内に存在する抗酸化物質であり凍結-融解によって精子内の含有量が低下する還元型グルタチオン(GSH)に着目し、精液凍結用の希釈液への予めのGSH補給がウシ凍結精液の質および体外受精成績へ及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 雄ウシより採取した精液を、GSHを添加した卵黄ベースの一次希釈液、および耐凍剤を含む二次希釈液により希釈した後、凍結処理を行う。
  • GSHを添加した凍結精液を体外受精に用いることで、卵割率および胚盤胞発生率が改善する個体がみられる(図1)。
  • 卵割率が改善した個体1では、GSHを添加することで受精後の雄性前核の形成速度が速まり、内部細胞塊(ICM)の割合の増加と胚のDNAダメージの減少といった、胚盤胞の質を示す指標が改善する(図2、3)。

成果の活用面・留意点

  • 新鮮精液の希釈時に添加処理を行うため、体外受精における凍結-融解後の操作が不要である。人工授精への適用は未検討である。
  • GSHの至適添加濃度は、個体または精液ロットにより異なる傾向がみられ、希釈液の組成や新鮮精液の性状により変動する可能性が考えられる。
  • GSHの添加による精液の質について、FITC-PNA/PI染色法で評価した生存性および先体正常性への悪い影響はみられない。ただし、GSHの添加が過剰な場合には、精子運動性が低下する、またはTUNE(TdT-mediated dUTP Nick End Labeling)法で評価したDNA損傷率が増加する精液がみられるため、至適濃度での添加が必要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(伊藤記念財団研究助成)
  • 研究期間 : 2017~2021年度
  • 研究担当者 : 緒方和子、武田久美子、ソムファイ タマス、小林栄治、渡邊伸也、今井昭(広島県畜技セ)、佐藤伸哉(広島県畜技セ)、西野景知(茨城県畜産セ)、木村和輝(茨城県畜産セ)
  • 発表論文等 :
    • Ogata K. et al. (2022) J. Reprod. Dev. 68:53-61
    • 武田ら(2020)平成31年度(令和元年度)食肉に関する助成研究調査成果報告書、38:199-203
    • 武田ら(2019)平成30年度食肉に関する助成研究調査成果報告書、37:212-219
    • 武田ら(2018)平成29年度食肉に関する助成研究調査成果報告書、36:190-197