アラニン非添加培養によるウシ体外受精卵発生の改善

要約

従来のウシ体外受精卵培養液から非必須アミノ酸であるアラニンを非添加にした際、高受胎性の指標を満たす移植可能胚の作出効率が向上する。

  • キーワード : ウシ、体外受精卵、発生、受胎、培地、アラニン
  • 担当 : 畜産研究部門・乳牛精密管理研究領域・乳牛繁殖性向上グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ウシ体外受精卵移植による産子の作出は、人工授精と比較して受胎率が低いことから、十分な実用化に至っていない。発生過程の発生速度や形態に関する4つの指標を満たす受精卵は70%を超える高受胎性を有するため、この指標を満たす受精卵を増産するための培養系の構築が重要である。ウシ体内で受精卵が発生する場である卵管中では、7種類の非必須アミノ酸が多様な濃度で存在しているにもかかわらず、一般的なウシ体外受精卵培養液には非必須アミノ酸が均一濃度(100μM)で添加されている。この濃度は体細胞や組織の培養において最小限必須であるとされている濃度であるため、受精卵培養において有効であるかは定かではない。本研究では体外受精卵培養液に添加する非必須アミノ酸について、その必要性や最適濃度を、高受胎性受精卵の作出効率を評価項目として検討する。

成果の内容・特徴

  • 7種類の非必須アミノ酸を全て均一濃度で添加したものを対照区とし、一種類ずつ非添加とした培養液を作成すると(表1)、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンを非添加とした際に4指標を満たす発生率が向上する傾向にある(図1)。
  • アラニンの非添加は移植可能な受精卵の総数には影響を及ぼさないが、第一分割の際の指標に効果を及ぼし、4指標を満たす優良受精卵発生率を有意に向上させる(図2)。
  • アラニンは受精直後の前核形成を抑制している(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 発生過程の発生速度や形態に関する4つの指標とは、①媒精27時間後に2細胞に分割していること、②媒精31時間後に3細胞以上に分割していないこと、③媒精31時間後に細胞断片が存在しないこと、④媒精55時間後に6細胞以上に分割していることである(今井ら、2015、日本胚移植学雑誌)。
  • 常法により選抜された受精卵の移植後受胎率は40%程度であるため、4指標を満たす受精卵を増産できる培養液を開発することは受精卵移植の普及に向けて有効である。
  • 体外受精卵培養液に一般的に添加されているアラニンの阻害的な効果は、4指標を評価項目とすることで見出される新たな知見である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(伊藤記念財団研究助成)
  • 研究期間 : 研究機関:2022~2024年度
  • 研究担当者 : 伊丹暢彦、赤木悟史、平尾雄二
  • 発表論文等 : Itami N. et al. (2024) J. Reprod. Dev. 70:223-228
    doi.org/10.1262/jrd.2023-098