行動と自律神経機能モニタリングにより分娩後の乳牛における炎症性疾患の早期検出

要約

自律神経系機能モニタリングを活用し、乳牛の分娩後における健康な個体と炎症性疾患を発症した個体の心拍情報および行動学的変化を比較することにより、炎症性疾患の発症兆候を特定し、簡便かつ迅速な早期検出を可能とする開発技術である。

  • キーワード : 乳牛、分娩後、炎症性疾患、自律神経系機能、行動学
  • 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

牛の分娩は強い痛みとストレスを伴い、免疫機能の低下を引き起こし、乳房炎や子宮内膜炎などの炎症性疾患のリスクが高まる。これらの疾患は乳牛の健康を脅かすだけでなく、乳牛の生産性低下、農場運営およびアニマルウェルフェアにも影響を及ぼすリスクがある。しかし、現在、炎症性疾患の診断は、発症後からの検出が主であり、血液採取や病原体培養などの検査手法が必要とされ、農場レベルでの実用性が低い。そのため、より簡単かつ迅速に炎症性疾病の早期発見技術が求められている。
本研究では、乳牛の行動学および自律神経系機能のモニタリングにより、分娩後に炎症性疾病を罹患する牛と健康な個体を比較し、疾患の早期発見、早期治療に有用な情報を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 乳房炎もしくは子宮内膜炎に罹患した牛の平均心拍数は、分娩後1日目から7日目において健康な牛よりも高かった(図1(a))。
  • 自律神経バランスを示すLF/HF比は、健康な牛は3日目以降に降下した。一方、乳房炎もしくは子宮内膜炎疾患の牛は高い水準に維持いたこと確認した(図1(b))。
  • 乳房炎もしくは子宮内膜炎疾患の牛のTotal power値は、健康な牛よりも低いことが確認された(図1(c))。
  • 健康な牛の立位姿勢の時間割合は、乳房炎もしくは子宮内膜炎疾患の牛より分娩後2日目以降で少なかった(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は、乳牛の健康状態をモニタリングでき、分娩後の炎症性疾患の早期発見、早期治療により、家畜の生産性およびアニマルウェルフェアの向上につながる。
  • 本研究は比較的小規模なサンプルサイズで実施されたため、より多くの牛を対象としたさらなる検証が必要である。
  • 自律神経系機能モニタリングには専用のデバイスが必要であり、農場レベルでの実用化には機器のコストや設置条件を考慮する必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 黄宸佑、兒嶋朋貴、矢用健一
  • 発表論文等 : Huang C.Y.et al. (2024) Animal Science Journal 95:e13960
    doi.org/10.1111/asj.13960