妊娠豚のアニマルウェルフェアを向上させる低コストな飼養管理方法

要約

豚舎内の妊娠ストールに一部を改修して群飼エリアを設け、数頭ずつの小グループに分割した妊娠豚を半日~1日ずつ群飼エリアに開放する飼養管理方法である。定期的な群飼の機会が生じることにより、生産性の低下を最小限に留めながら妊娠豚のアニマルウェルフェア向上に寄与する。

  • キーワード : 家畜管理、アニマルウェルフェア、妊娠豚、妊娠ストール、低コスト改修
  • 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

アニマルウェルフェア向上の観点から、養豚業では妊娠豚の単飼ストールでの飼育が特に問題視されており、欧米を中心に妊娠ストールの規制と群飼育システムへの移行が進んでいる。日本国内においても2023年に農林水産省が、妊娠豚の群飼育を「将来的な実施推奨事項」として位置づける指針を公表し、国内の生産現場でも妊娠豚飼育システムの変更を伴う対応の必要性が増している。
しかしながら、現在代表的な群飼育システムの導入には、面積当たりの飼養頭数の減少や、畜舎の新設、大規模改修による高額なコストを必要とするといった経済的なデメリットが伴うため、現状日本国内の多くの養豚農家にとっては採用可能な選択肢ではない。したがって本研究では、国内でも低コストで導入可能な、妊娠豚のアニマルウェルフェアを向上する飼養管理システムの開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • 本研究で考案した飼養管理方法は、従来豚舎に導入されているストールの一部を取り払うことで、群飼に必要なスペースを設け、日または時間帯ごとに異なる小規模グループで群飼を行うものである。
  • 現在欧米で一般的な妊娠豚群飼システムの導入には畜舎の新設や大規模な改修を必要とするが、本手法は既存の施設を元にした小規模な改修による低コストで導入可能である。また、必要な群飼エリアが少ないため、面積当たりの飼養頭数の減少を比較的小さく抑えることができる。
  • 本手法は、ストール内での給餌が可能であるため、ストール管理による個体管理の容易性を維持しつつ、群飼育時に問題となる、飼料摂取を巡る闘争を最小限に留めることができる。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は繁殖雌豚を飼養する養豚農家で利用可能である。
  • 本手法は導入を検討するうえで飼養頭数規模や、畜舎更新時期などの経営計画による制限を受けにくく、アニマルウェルフェアの向上を目指す幅広い生産者にとって採用可能な選択肢となる。生産者にとっての採用可能な選択肢が増えることにより、国内外の規制や消費者嗜好の変化に対する適応力が高まり、養豚業の持続可能性の強化にも貢献する。
  • 技術移転に当たっては、農家ごとの畜舎規模や構造に合わせた適切な改修、建設方法を逐一検討する必要があるため、畜舎の設計、施工経験が豊富な専門業者との連携が必要になると考えられる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進:鶏及び豚の快適性により配慮した飼養管理技術の開発)
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 嶋崎知哉、石田三佳、矢用健一、竹田謙一(信州大)
  • 発表論文等 : 嶋崎ら、特願(2025年2月28日)