要約
アニマルウェルフェア配慮施設の日本全体への対応した場合の小売価格、飼養羽数および農場面積について将来的な試算を行ったところ、ケージフリー導入は価格、羽数および面積全てにおいて増加する。移行期間中には需要と供給の不均等が生じるため、計画的で長期的な転換が必要である。
- キーワード : アニマルウェルフェア、施設移行、将来予測、シミュレーション、採卵鶏
- 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
アニマルウェルフェア(AW)に配慮した飼養施設の導入には、農場面積あたりの家畜生産性の低下が懸念されているが、生産性の低下によって国民が必要とする卵の需要量(消費量)を満たすことが可能かという試算はなされていない。これは、食料安全保障の視点から非常に重要である。また、AW配慮施設で生産された卵は通常よりも2倍程度高くなることは先行研究で明らかになっていたが、日本全体の生産システムへの対応がどの程度価格に影響するかや、飼養羽数および農場面積への影響については試算されておらず、日本におけるAW配慮施設を導入した場合の多面的な影響を可視化した将来にわたる推計が求められている。
成果の内容・特徴
- 2050年の卵消費量(対1998年)は14%減少と予測した(図2)。
- 需要と供給が不均等になった場合の卵価格の上昇率モデルを開発し、消費者への影響が予測可能となる(図2)。
- 全卵がケージフリー生産になると2050年の卵の平均小売価格は377[円/10個]で全卵バタリー生産よりも177%、飼養羽数147%、農地面積478%で増加することが明らかとなる(図3)
- 移行途中に卵供給量が消費量に満たない可能性があることを予測し、AW配慮施設移行には計画的に長期的な転換が必要であることが明らかとなる。
成果の活用面・留意点
- AW配慮施設への移行に伴う課題の抽出に活用可能である。
- 日本国民に必要な鶏卵量の将来的な動向に活用可能である。
- 卵価格の上昇率モデルから、消費者への購買行動への影響が予測可能となる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進:鶏及び豚の快適性により配慮した飼養管理技術の開発)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 加藤博美、嶋崎知哉、矢用健一
- 発表論文等 : Kato H. et al. (2024) J. poult. sci. 61
doi.org/10.2141/jpsa.2024019