排水処理における固液分離を自動化するAI凝集センサ構築用アプリ

要約

本アプリをインストールしたデバイスとカメラを組み合わせて、AI凝集センサを容易に作製できる。固液分離機の槽内における凝集の程度を測定できる初めてのセンサである。制御機能により凝集剤の投入量を自動化でき、固液分離性能の向上と運用の省力化を実現する。

  • キーワード : 排水処理、AI画像認識、スマート化、凝集制御
  • 担当 : 畜産研究部門・高度飼養技術研究領域・スマート畜産施設グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

固液分離では、凝集剤(薬剤)を排水に投入して、排水中の不溶性懸濁物を凝集させて固形分と液分に分離する。凝集剤の投入量は排水の濃度・性状に合わせて調整が必要である。しかし、凝集の程度(凝集度)を測定する既存のセンサはなく、濃度変動に追随した自動化は困難である。
そこで、凝集度を測定可能なAI搭載センサの開発に向け、その中核となるアプリを作成する。AI凝集センサにより、凝集剤投入量の調整や凝集槽の巡回の省力化、分離性能の向上、凝集不良に伴うトラブル回避が期待できる。

成果の内容・特徴

  • 本アプリをインストールしたデバイスとカメラを組み合わせて、AI凝集センサを作製できる(図1)。センサは任意の間隔で固液分離機の凝集槽内の撮影とAI測定、凝集剤投入ポンプの流速を増減することで、凝集度を任意の値に制御できる(図2)。スマートフォンでセンサの操作とデータ閲覧できる。
  • 凝集度は0~1の連続値として扱い、使用する固液分離機に適した凝集度を設定する。図3の例では良好を0.5、投入量不足/過剰時を0.2/0.8に設定した。凝集度の値は、フィルターろ過等の分析値や熟練者の目視による評価値など、任意に設定可能である。
  • 多様な凝集画像を用いて深層学習を行い、推論精度(決定係数R2)が概ね0.8以上となるまで、データ取得と学習を反復する(図4左)。アプリには余剰汚泥の凝集画像で学習済みのAIモデルを同梱しており、これをベースに追加学習することで必要データ数と学習時間を低減できる。さらに、プログラミング不要でクリック操作のみで深層学習が可能なツールも含む。
  • 図4右は、凝集度の制御試験の実施例である。制御の目標値は任意に設定可能(本例では0.7に設定)。実験開始時は凝集度0の状態に余剰汚泥を連続投入した。センサにより凝集剤を投入することで凝集度は徐々に上昇し、0.7到達で上昇が止まった。その後は目標値±誤差0.1の範囲で一定に保たれ、自動制御の有効性が示されている。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : センサメーカー、排水処理関連企業。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 日本全国。
  • その他 : 本アプリは、NVIDIAの高速AI推論フレームワーク(TensorRT)に対応したデバイス(LinuxベースのシングルボードコンピュータやWindows PC等)上で、プログラミング言語Pythonで動作する。導入に必要な機材は、本体とカメラに加えてインバータ、インバータ対応の凝集剤投入ポンプ、カメラボックス、LED照明機器等である。カメラボックスを凝集槽の上部に設置して、カメラで槽内を撮影する。対象は有機系(例 : 余剰汚泥や食品系排水)に限らず、無機系排水の凝集処理にも適用可能と推測される。本アプリは農研機構の職務作成プログラムとして有償で提供しており、農研機構ホームページの「産学連携・品種・特許」→「職務作成プログラム」から申込。本アプリがインストールされたAI凝集センサ(本体、カメラ等一式)は、令和9年度から株式会社リセルバーより入手できる。

具体的データ

図1 AI凝集センサによる凝集度制御の概要(上)とアプリのトップ画面サンプル(下),図2 AI凝集センサアプリのプログラム概要,図3 余剰汚泥の凝集画像集,図4 AI凝集センサの精度(左)と凝集度の制御試験(右)

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(戦略的スマート農業技術等の開発・改良)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 横山浩、山下恭広
  • 発表論文等 :
    • Yokoyama H. et al. (2024) Water Res. 260:121890 doi.org/10.1016/j.watres.2024.121890
    • 横山ら(2023)職務作成プログラム「凝集度センシングおよび外部装置制御用AIアプリ」、機構-G13
    • 横山ら(2024)職務作成プログラム「AIモデル作成支援プログラム」、機構-G21