要約
イタリアンライグラスの個体間には脱粒性に幅広い遺伝的変異があり、その遺伝率は高い。脱粒性遺伝子座qSH2.1は高い効果を示し、また難脱粒性は部分顕性を示す。qSH2.1近傍に開発したDNAマーカーは幅広い材料を用いた難脱粒性育種に利用できる。
- キーワード : イタリアンライグラス、脱粒性、遺伝子座、DNAマーカー、育種
- 担当 : 畜産研究部門・畜産飼料作研究領域・飼料作物育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
国内育成優良牧草品種の普及を促進するための方策の一つとして、種子生産性が高く安価で安定的な種子供給が可能な品種の育成が考えられる。種子生産において種子の脱粒は収穫ロスの大きな要因の一つであることから、難脱粒性品種の開発が求められている。
そこで本研究の目的は、国内で最も流通量の多い一年生牧草であるイタリアンライグラスを対象に、脱粒性の個体間の遺伝的変異、およびそれに関与する遺伝子座を解明するとともに、難脱粒性の選抜を容易にするDNAマーカーの開発を行う。
成果の内容・特徴
- イタリアンライグラスの個体間には幅広い脱粒性の遺伝的変異があり、収穫適期においてほとんど脱粒しない個体が存在する(図1)。
- 脱粒性の両親平均値と後代母系平均値は高い相関を示し、脱粒性の遺伝率が高い(図2)。
- 難脱粒性個体と易脱粒性個体のF2連鎖解析により、第2連鎖群短腕側末端に脱粒性遺伝子座qSH2.1が見出される(図3A)。qSH2.1は全体の脱粒性のばらつき(表現型分散)の66%を説明可能な効果を有する。図3Bの例のようにqSH2.1においてヘテロ型の脱粒性は難脱粒性ホモ型よりは高いものの両ホモ型の中間値より低いことから難脱粒性は部分顕性である。ヘテロ型でも難脱粒性個体を生じさせることができるため、育種への利用が容易である。
- qSH2.1近傍に見出した挿入・欠失多型に基づくDNAマーカーは、難脱粒性個体と多くの一般品種・系統の間で多型を示すことから、幅広い材料を利用した難脱粒性の育種選抜に利用可能である(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本成果の難脱粒性の遺伝資源および選抜DNAマーカーを用いることで、難脱粒性イタリアンライグラス品種の効率的な育成が可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進 : みどりの品開発加速化プロジェクト)、文部科学省(科研費)、その他外部資金(市村清新技術財団植物研究助成)
- 研究期間 : 2020~2024年度
- 研究担当者 : 田村健一、清多佳子、水林達実、山川博幹、山口貴史、内藤健
- 発表論文等 :
- Tamura K and Kiyoshi T (2025) Grassl Sci 71:179-187
- Tamura K. et al. (2025) Theor Appl Genet 138:11
- 田村ら 特願(2025年4月27日)