訓練されていないパネルにおける鶏肉エキス中のチキンオイルとグルタミン酸の識別閾値

要約

一般消費者のモデルとして官能評価について訓練されていないパネルを用いた識別試験における鶏肉エキス中のチキンオイルの識別閾値は341μg/mLであり、グルタミン酸は200μg/mLの濃度差があっても識別できない。

  • キーワード : 食肉、脂肪、グルタミン酸、官能評価、識別試験
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉品質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、「食べてわかる違い」に基づく食肉の差別化の取り組みが各地域や海外において行われている。脂肪およびうま味成分であるグルタミン酸は食肉の高付加価値化において「おいしさ」を向上させる有用な成分として期待されているが、これら成分の含量が異なる食肉の官能特性の比較や評価は主に訓練されたパネリストにより行われている。食肉は通常、一般消費者が購入して味わい、実際の購買行動や食行動に反映されることから、官能評価に関する選抜や訓練が施されていない一般的なヒトにおける食肉中の脂肪とグルタミン酸の識別閾値を解明することは食肉の差別化に有用である。
そこで本成果では、一般消費者のモデルとして訓練されていないパネルを用い、チキンオイルもしくはグルタミン酸の濃度を変えて添加した複数種類の鶏肉エキスと、これらの成分が無添加の鶏肉エキスとの識別試験を行った結果から、訓練されていないパネルにおける鶏肉エキス中のチキンオイルとグルタミン酸の識別閾値を示す。

成果の内容・特徴

  • 食鶏取引規格における骨つきうわもも部分を除骨後にミンチし、熱水(90°C)で2時間加熱抽出した後、2Lに定容し、0.3%(w/v)となるように加塩したエキスを調製する。
  • 1.で調製したエキスにチキンオイルを43、129、387、1,160μg/mL添加して超音波ホモジナイザーで乳化し(12,000rpm、40°C、5分)、チキンオイルを添加したエキスとする。
  • 1.で調製したエキスにグルタミン酸を10、50、110、200μg/mL添加し、グルタミン酸を添加したエキスとする。
  • 農研機構畜産研究部門の職員から募集した訓練されていないパネリスト32名により、2.と3.で調製したエキスと1.で調製したエキスの三点識別の正解数、不正解数を表1に示す。
  • チキンオイルを添加したエキスは387および1,160μg/mL添加した場合に正解数が正解の期待値(1/3)を上回り、無添加のエキスと識別可能である。グルタミン酸を添加したエキスはすべての濃度において正解数が正解の期待値(1/3)を上回らなかったため、鶏肉エキス中のグルタミン酸の濃度に200μg/mLの差があっても識別できない。
  • チキンオイルを添加したエキスにおいて、表1の各濃度における正解率を三点識別における正解の期待値(1/3)で補正して真の正解率を算出し、得られた真の正解率とチキンオイルの添加濃度から計算したプロビット回帰曲線を図1に示す。識別閾値は真の正解率が0.5となる濃度であることから、鶏肉エキスにおけるチキンオイルの識別閾値は341μg/mLである。

成果の活用面・留意点

  • 鶏肉の熱水抽出物において、訓練されていないヒトが「食べてわかる違い」を認識しうる油脂およびグルタミン酸の含量の参考値として活用できる。
  • 本成果において評価を実施した訓練されていないパネリストは農研機構畜産研究部門に所属する32人の職員に限定されるため、パネリストの人数と代表性に留意が必要である。
  • 本成果はモデル系として鶏肉エキスを用いているため、鶏以外の畜種から得た食肉の熱水抽出物、固体である精肉および加工肉等における脂肪やグルタミン酸の識別閾値とは異なる可能性があるため注意が必要である。

具体的データ

表1 成分無添加のエキスとチキンオイルもしくはグルタミン酸を添加したエキスの三点識別,図1 チキンオイル添加量と真の正解率とのプロビット回帰曲線による訓練されていないパネルの鶏肉中のチキンオイルの識別閾値の推定

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2022~2025年度
  • 研究担当者 : 渡邊源哉、石田翔太、赤田花林、小松雅也、櫻井宏樹(筑波大、現北農研)、篠田咲紀(茨城大)、本山三知代、中島郁世、浅野敦之(筑波大)、宮口右二(茨城大)、佐々木啓介
  • 発表論文等 : Watanabe G. et al. (2025) Anim. Sci. J. 96:e70022