要約
慢性暑熱環境下の産卵鶏に対して、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を添加給与すると、産卵率および日産卵量は改善し、腎障害は緩和される。
- キーワード : 産卵鶏、暑熱曝露、腎臓、ミトコンドリア、5-アミノレブリン酸
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
暑熱環境下の産卵鶏では、産卵量の低下のみならず、卵殻質の劣化による破卵率の増加が起こる。これら生産性低下の要因として、卵殻形成に不可欠なミネラルの代謝を担う腎臓機能の障害が関与する可能性をこれまで示してきた。腎臓はエネルギー依存性が高く、ミトコンドリアを豊富に含むため、ストレス環境下で損傷を受けやすい臓器である。
本研究では、慢性暑熱環境下の産卵鶏において、腎臓機能低下を防ぎ、生産性を改善するための戦略として、ミトコンドリア電子伝達系に関与し、エネルギー代謝に重要な役割を果たす5-ALAを飼料に添加し、生産性および腎臓に対する緩和効果を検証する。
成果の内容・特徴
- 46週齢の産卵鶏に5-ALAを0、10、100ppm添加した飼料を給与し、32°C、湿度55~60%で3週間暑熱曝露した結果、暑熱曝露により産卵率、産卵量、卵殻強度および卵殻厚が低下するが、5-ALA添加で産卵率が上昇し、日産卵量も改善傾向(P=0.08)を示す(表1)。
- 暑熱曝露により腎臓の線維化領域が増加し、線維化関連遺伝子(TGF-β)の発現が上昇するが、5-ALA添加で線維化領域と関連遺伝子の発現量が低下し、腎線維化の進行が抑制される(図1)。
- 暑熱曝露により腎臓では酸化ストレス指標TBARSが増加するが、5-ALA添加により低減傾向(P=0.07)を示し、酸化ストレス状態が緩和される(図2)。
成果の活用面・留意点
- 3週間の慢性的な暑熱環境下で産卵鶏に生じる腎機能低下のメカニズムに基づき、栄養制御を実践した基礎的な知見である。
- 産卵ピーク期の産卵鶏を対象とした一定温度(32°C)での慢性的暑熱曝露試験の結果であり、他の温度条件や鶏種への適用には追加検証が必要である。
- 実験室レベルの飼養試験の結果であり、農場規模での実証試験を通じて実用性を確認する必要がある。
- 5-ALAは、光合成細菌培養液を含む混合飼料として市販されている。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)、環境省(環境研究総合推進費)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 原文香、大津晴彦
- 発表論文等 : Nanto-Hara F. and Ohtsu H. (2025) Antioxidants 14:556