多産系母豚の授乳期におけるリジン要求量の推定

要約

2~6産次のLW交雑種多産系母豚に授乳開始頭数を13.3頭として、リジン濃度が異なる飼料を給与し、血中指標を用いて有効リジン要求量を推定すると、多産系母豚の産後4週目における1日当たりの有効リジン要求量は62.1g、要求量を満たす飼料中有効リジン濃度は0.80~0.85%である。

  • キーワード : 多産系母豚、リジン要求量、血漿遊離リジン、血漿尿素窒素、授乳期
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

授乳期の母豚は、体の維持に加えて泌乳に多くの栄養素を必要とする。近年、日本国内では多産系母豚の導入が進み、生存産子数や年間離乳頭数は増加傾向にある。授乳頭数の増加により必要な栄養素所要量が高まり、授乳豚への負担が高まっていると推察される。リジンは豚の飼料における第一制限アミノ酸であり、乳生産に関与するだけでなく、アミノ酸栄養の基準となる重要な成分である。しかし、多産系母豚の授乳期におけるリジン要求量については十分に解明されていない。
そこで本研究では、多産系母豚の授乳期における1日あたりのリジン要求量およびそれを満たすための飼料中リジン濃度を推定する。

成果の内容・特徴

  • 出産した2産次以降の繁殖用雌豚32頭(体重264±16kg、平均産次3.1±1.2、産子数15.5±2.4頭)について授乳子豚の数を13.3±0.9頭に調整した上で、分娩2日後から28日後まで、有効リジン濃度が0.69%、0.83%、0.94%、1.07%の4種類の試験飼料を給与した試験の結果である。
  • 授乳豚の離乳時における血漿遊離リジン濃度および血漿尿素窒素濃度と、産後4週目の1日あたりの有効リジン摂取量との関係を折れ線モデルに当てはめた結果、いずれも有効リジン要求量は62.1g/日と推定される(図1)。また、4週の飼料摂取量(7.78kg)から算出される要求量を満たす飼料中有効リジン濃度は0.80%となる。
  • 同様に、離乳時における授乳豚の血漿遊離リジン濃度および血漿尿素窒素濃度と飼料中有効リジン濃度との関係を折れ線モデルに当てはめた結果、産後4週の要求量を満たす飼料中有効リジン濃度は、それぞれ0.85%および0.84%と推定される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の成果は、多産系母豚の授乳期におけるリジン要求量に関する基礎的なデータとして日本飼養標準・豚の改訂に活用される。
  • 本研究では、実験期間中に子豚へ餌付け飼料は給与していない。
  • 母豚のリジン要求量は、授乳子豚数および子豚の増体重によって変動するため、飼料設計に際してはこれらの要因を考慮する必要がある。

具体的データ

図1 1日有効リジン摂取量と血漿遊離リジン濃度(左)あるいは血漿尿素窒素濃度(右)の関係,図2 飼料中有効リジン濃度と血漿遊離リジン濃度(左)あるいは血漿尿素窒素濃度(右)の関係

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進 : 鶏及び豚の快適性により配慮した飼養管理技術の開発)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 芦原茜、大森英之、井上寛暁、石田藍子
  • 発表論文等 : 芦原ら(2025)日畜会報、96:325-335