要約
畜舎に出没する野生動物の日周活動パターンを解析し、畜産現場の防疫に有用な情報を提供する。クマネズミは日没後から日出前に活動しているため夜間のモニタリングが重要である。また、クマネズミは食肉目と活動時間帯が重複し、食肉目に対して回避・防御行動を示さない。
- キーワード : ネズミ管理、クマネズミ、家畜感染症対策、日周活動パターン
- 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
畜産現場ではネズミ対策を実施するよう飼養衛生管理基準で義務付けられているが、国内の畜産現場の約80%がネズミの出没を確認しており対策は十分に進んでいない。日本のネズミ対策は殺鼠剤を多用した結果、殺鼠剤抵抗性個体の増加や捕殺器・殺鼠剤に対する警戒性の上昇が起こっている。近年、特に欧米において、生態的知見に基づいたネズミ管理(Ecologically-Based Rodent Management)の重要性が指摘されている。
そこで、本研究では各1ヶ所の牛舎および豚舎においてセンサーカメラを用いて舎内に出没するネズミを観察し、日周活動パターンおよびその他の哺乳類との活動パターンの重複程度を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本研究ではクマネズミ以外のネズミ類は観察されていない。牛舎のクマネズミは深夜に活動のピークを示し(図1a)、豚舎のクマネズミは日没および日出に活動のピークが見られたことは(図1b)、畜舎によってクマネズミの日周活動パターンが異なることを示唆する。
- センサーカメラは牛舎に11台、豚舎に13台設置したところ、クマネズミの1カメラ1日当たりの撮影頻度は牛舎で0.75回、豚舎では1.6回であることから、クマネズミは常態的に出没していることを示唆する。
- 畜舎内には食肉目の哺乳類(イヌ、ネコ、イタチ類)が出没したが、クマネズミとこれらの食肉目の日周活動パターンの重複程度は高く、クマネズミはこれらの食肉目に対して回避・防御行動を示さなかったことから、食肉目の存在がクマネズミを忌避させる効果は低いと推測される(図2a、b)。
- 各畜舎のネズミが示した行動のうち、牛舎のネズミは探索行動に次いで方向転換の割合が最も多いのに対し、豚舎のネズミは探索行動の他に社会行動やグルーミングの割合が高かったことから、畜舎によってネズミは異なる行動を示すと考えられる(図3a、b)。
成果の活用面・留意点
- 畜舎における野生動物対策において、管理者の目につきにくい夜間のモニタリングが重要であることを示している。
- 本調査は夏期のみの実施で季節等の外的要因を考慮できていないため、より長期間の観察が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2021~2023年度
- 研究担当者 : 小泉亮子、遠藤友彦、平田滋樹、谷川力(日本ペストコントロール協会)、清川泰志(東京大学)
- 発表論文等 : Koizumi R. et al. (2024) Anim. Sci. J. 95:e13982