ダイズ作におけるイマザモックスアンモニウム塩液剤を活用したマルバアメリカアサガオの防除技術

要約

ダイズ狭畦栽培において新規広葉用選択性茎葉処理剤であるイマザモックスアンモニウム塩液剤の単剤処理でマルバアメリカアサガオを対照区比で最大92%防除できる。また、本剤とベンタゾン液剤との体系処理によってマルバアメリカアサガオに対する防除効果はより安定的に高くなる。

  • キーワード:ダイズ、マルバアメリカアサガオ、帰化アサガオ類、イマザモックスアンモニウム塩液剤、初期薬害
  • 担当:植物防疫研究部門・雑草防除研究領域・雑草防除グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズ作では難防除雑草である帰化アサガオ類の蔓延が問題となっている。なかでもマルバアメリカアサガオに対する広葉用茎葉処理剤の効果は低く、既存の茎葉処理剤では単剤処理での防除は困難である。近年、ダイズ作での使用が可能な茎葉処理剤としてイマザモックスアンモニウム塩液剤が加わり、既存のベンタゾン液剤との体系処理も可能になった。しかし、イマザモックスアンモニウム塩液剤単独のマルバアメリカアサガオに対する防除効果は不明であり、また、これらの除草剤を活用した有効な防除体系も検討されていない。加えて、イマザモックスアンモニウム塩液剤は、寒地ではダイズへの初期薬害が生じた事例も報告されているものの、詳細は不明である。
そこで、本研究では新規茎葉処理剤であるイマザモックスアンモニウム塩液剤を活用したマルバアメリカアサガオに対する除草効果の高い防除体系を構築するとともに、本薬剤がダイズの初期生育や収量に及ぼす影響を解明する。

成果の内容・特徴

  • イマザモックスアンモニウム塩液剤を単独処理する場合、処理時期が遅いほどマルバアメリカアサガオの残草量は少なくなり、2葉期処理では対照区比で92%防除できる(図1)。また、イマザモックスアンモニウム塩液剤とベンタゾン液剤の体系処理では、いずれの処理時期においても高い防除効果が得られる(対照区比94~98%減)。
  • 4葉期を越えたマルバアメリカアサガオに対してもイマザモックスアンモニウム塩液剤の枯殺率は高く(77%;ダイズ2葉期処理;77%)、生育の進んだマルバアメリカアサガオに対しても本剤の除草効果は高い(表1)。また、ベンタゾン液剤との体系処理によって、いずれの時期に発生したマルバアメリカアサガオに対しても枯死率は高くなる(87~100%)。
  • イマザモックスアンモニウム塩液剤処理後にはダイズの初期薬害が確認され、処理7日後のダイズの地上部乾物重は対照区(土壌処理剤のみ)と比較して減少する傾向であり、年次および処理時期によっては最大で2割程度減少する(図2)。ダイズの初期薬害の症状として、縮葉や株の矮化、稀に主茎の生長点の枯死が挙げられる。
  • ダイズの子実収量は年次およびイマザモックスアンモニウム塩液剤の処理時期によって変動するが、3年間の試験結果を総合すると統計上の有意な減収は認められない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で供試した除草剤は、土壌処理剤としてジメテナミドP・リニュロン乳剤、広葉用茎葉処理剤としてイマザモックスアンモニウム塩液剤およびベンタゾン液剤、イネ科用茎葉処理剤としてキザロホップエチル水和剤(ダイズ5葉期処理)である。また、本研究は西日本農業研究センター(広島県福山市)内のダイズ品種「サチユタカ」栽培圃場(6月20日前後の標準播種期)において得られた成果である。
  • イマザモックスアンモニウム塩液剤は他の茎葉処理剤と比較して早い時期から使用可能であり、また、比較的生育が進んだマルバアメリカアサガオに対しても効果が高いことから防除体系に組み入れやすい。また、従来の防除体系と比較して、除草剤の散布適期幅が広がることで防除の作業分散が可能になるため、本防除体系は生産現場での有用な防除手段の一つとなる。
  • イマザモックスアンモニウム塩液剤処理による初期薬害程度には、薬剤処理後数日間(3日程度)の気象条件が影響し、その時期の低温や低日照、多雨条件によって初期薬害が助長されると考えられる。

具体的データ

図1 秋季のマルバアメリカアサガオ残草量,表1 除草剤処理時のマルバアメリカアサガオの葉齢および発生時期毎の枯死率,図2 イマザモックスアンモニウム塩液剤処理7日後のダイズ地上部乾物重,表2 ダイズの子実収量に関する分散分析表

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:多収阻害要因の診断法及び対策技術の開発)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:浅見秀則、橘雅明、本間香貴(東北大)
  • 発表論文等:浅見ら(2021)雑草研究、66:48-58