難防除雑草マメアサガオに対する選択性除草剤の防除効果はダイズ苗立ち数で変動する

要約

ダイズ栽培では難防除雑草マメアサガオは、土壌処理兼茎葉処理剤および茎葉処理剤との体系処理によって防除するが、ダイズに被陰されないと除草剤の防除効果が大幅に低下するため、ダイズ苗立ち数の確保によるダイズ群落の早期の被陰が重要である。

  • キーワード : マメアサガオ、ダイズ、苗立ち、被陰、選択性除草剤
  • 担当 : 植物防疫研究部門・雑草防除研究領域・雑草防除グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ダイズ作では難防除雑草である帰化アサガオ類の蔓延が問題となっている。帰化アサガオ類に対しては土壌処理兼茎葉処理剤(イマザモックスアンモニウム塩液剤)、広葉用茎葉処理剤(フルチアセットメチル乳剤、ベンタゾン液剤)を組み合わせた体系処理が必要であり、帰化アサガオ類各種の生態的特性を考慮した防除対策の最適化が求められる。特にマメアサガオはマルバルコウより除草剤に対する反応が弱く、除草剤の体系処理だけでなく、総合的防除技術の開発が求められている。そこで、本研究ではマメアサガオおよびマルバルコウが蔓延する生産者のダイズ圃場において、複数の除草剤体系処理を行い、マルバルコウおよびマメアサガオに対する除草効果を検証する。併せて、除草剤による防除効果とダイズ群落内の光環境との関係を解析し、総合的防除体系の構築に必要な基礎的な知見を集積する。

成果の内容・特徴

  • 本研究で実施した各種除草剤体系処理は、マメアサガオ、マルバルコウに対して有効であり、除草剤処理区における秋季の残草量(対照区比)は、ダイズの生育が良好な圃場においてマメアサガオでは1~5%、マルバルコウでは0~14%に抑制される(表1)。
  • マメアサガオではダイズ苗立ち数が少なく、群落の被陰が十分でないと土壌処理兼茎葉処理剤、広葉用茎葉処理剤の防除効果が低下する(図1、2)。一方、マルバルコウは、ダイズ群落の被陰が十分でなくても、各種除草剤体系処理による防除効果は極めて高い。
  • したがって、ダイズ作において発生するマメアサガオは、土壌処理兼茎葉処理剤と広葉用茎葉処理剤とを組み合わせた体系処理とダイズの苗立ち数の確保による早期被陰(作物群落の閉鎖)を組み入れた総合的防除により防除する。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、帰化アサガオ類の草種毎の生態的特性に応じて除草体系やダイズの栽培方法(栽植密度等)の検討が必要であることを示唆している。今後、本成果で得られた知見は帰化アサガオ類の草種別防除技術の開発および高度化に活用される。
  • 本研究は2か年計8圃場(計1.04ha)で実施した現地実証試験(広島県東広島市)で得られた結果である。
  • 供試した除草剤は、土壌処理剤としてジメテナミドP・リニュロン乳剤、土壌処理兼茎葉処理剤としてイマザモックスアンモニウム塩液剤、茎葉処理剤としてフルチアセットメチル乳剤およびベンタゾン液剤、キザロホップエチル水和剤である。いずれの除草剤についても農薬登録内の最大薬量で処理した。ジメテナミドP・リニュロン乳剤とキザロホップエチル水和剤は、マメアサガオに対する防除効果はなく、それ以外の雑草防除を目的として散布した。供試したダイズ品種は「サチユタカ」および「あきまろ」(6月下旬~7月下旬播種)で、栽培様式は畦幅30cmの狭畦密植栽培である。なお、ダイズ播種期の違いは除草効果や帰化アサガオ類の出芽推移等の結果には影響していない。

具体的データ

表1 本試験で実施した除草剤処理体系の残草量(2019~2020年),表1 本試験で実施した除草剤処理体系の残草量(2019~2020年),図2 ダイズの群落内相対光量子束密度が帰化アサガオ類に対する茎葉処理剤の防除効果に及ぼす影響

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:多収阻害要因の診断法及び対策技術の開発)
  • 研究期間 : 2019~2020年度
  • 研究担当者 : 浅見秀則
  • 発表論文等 : 浅見(2022) 雑草研究、67:129-138