要約
トマトのトバモウイルスであるtomato brown rugose fruit virusは、トマト、ピーマン、ナスを含むナス科の作物や雑草に全身感染し、モザイク等を発症する。トバモウイルス抵抗性のトマト品種にも全身感染する。
- キーワード : tomato brown rugose fruit virus (ToBRFV)、トマト、ピーマン、ナス、雑草
- 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・越境性・高リスク病害虫対策グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
2014年にイスラエルで発生した新種トバモウイルスのtomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)は、種子伝染するため、種子流通により拡散し、2023年までにおよそ40か国で発生が確認されている。日本では未発生であるが、ToBRFV汚染種子等による国内侵入を厳重に警戒し、かつ万一国内のトマト等作物で発生した場合に迅速に発見し、拡散を最小限にとどめる必要がある。本研究では、これらに資する情報を得るため、ToBRFVイスラエル株の接種試験により、トマト等ナス科作物の国内主要品種、ならびにナス科を中心とするウイルス検定植物および雑草における宿主範囲や病徴の進展等を明かにする。
成果の内容・特徴
- トマトでは、調査した19品種のうち、Tm-1をホモで有するGCR237を除き全ての品種に全身感染して葉にモザイクを発症する(図1)(表1)。海外で報告されている果実の変色やえそ症状は、本研究の試験条件下では、市販の1品種で一時的に認められた果皮の変色を除き、全く認められない。
- ピーマンでは、抵抗性遺伝子Lを持たない品種は全身感染してモザイクを発症したが(図1)、L1~L4を保有する品種では、接種葉に過敏感反応を生じて、全身感染しなかった(表1)。ナスでは、接種後の上位葉に波打ちや退緑斑点が一過的に生じた後、多くの場合ほぼ無病徴となるが、その場合でも全身に感染しており、果実や種子からもウイルスは検出される。
- 他の作物、ウイルス検定植物、雑草の多くにも感染する。これらのうちハリナスビ、ペピーノ、アメリカイヌホオズキ、オオイヌホオズキ、オオセンナリは、新規に見いだされた全身感染宿主である(表2)。
普及のための参考情報
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業 : Tomato brown rugose fruit virusの多検体診断技術及び防除技術の開発、国際基準を踏まえた防疫指針策定のための調査委託事業)
- 研究期間 : 2020~2024年度
- 研究担当者 : 久保田健嗣、竹山さわな、石橋和大、松下陽介、冨高保弘、松山桃子、篠坂響、大﨑康平
- 発表論文等 :