要約
水稲直播栽培の難防除雑草であるオモダカ、クログワイ、グリホサート抵抗性ネズミムギに対して、化学的防除法や耕起などを組み合わせて省力的に防除する技術である。本技術の導入にかかる経費と慣行体系にかかる経費との差はわずかである。
- キーワード : 直播栽培、オモダカ、クログワイ、グリホサート抵抗性ネズミムギ
- 担当 : 植物防疫研究部門・雑草防除研究領域
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
水稲直播栽培は省力・低コスト化技術のひとつであるが、現状では、直播栽培時にオモダカ、クログワイといった難防除雑草の防除ができないため、これらの草種がまん延する水田では移植栽培期間に徹底防除し、根絶後に直播栽培を導入するよう営農指導がなされている。そこで、本研究では、水稲直播栽培の面積拡大と省力・低コスト生産に資するため、水稲直播栽培におけるオモダカ、クログワイなどの難防除雑草の防除技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 本技術は、各種直播栽培において問題となるオモダカ、クログワイ、グリホサート抵抗性ネズミムギを対象に化学的防除法や耕種的手段を適宜組み合わせた体系防除技術である。
- 湛水直播栽培で問題となるオモダカ、クログワイは出芽期間が長いため、有効な除草剤を複数回使用する体系処理で防除する。1回目の除草剤処理は、イネの平均葉齢が1葉に達した時期以降に実施、2回目の除草剤処理はオモダカ、クログワイの生育ステージが除草剤の適用範囲の時期に実施する(図1)。オモダカ、クログワイよりも出芽が早いノビエやイヌホタルイなどに対しては、イネ1葉期以前の一般雑草防除用の除草剤処理も必要となる。本防除体系の継続により、発生量は大幅に減少する(図2)。除草にかかる経費はいずれの体系も慣行体系との差はわずかである(表1)
- 不耕起乾田直播栽培で問題となるグリホサート抵抗性ネズミムギは、冬季の整地前の防除と春季の播種前の防除の体系で実施する。整地前に発生したネズミムギは整地時の耕起作業後にも一定数が再生し、生育が進んで防除が困難となるため、整地前の防除が必須である。整地後に出芽したネズミムギは播種前にも防除する。具体的には、鎮圧整地の場合は整地前と播種前に有効な除草剤処理、代かき整地の場合は整地前の防除は不要で播種前の有効な除草剤処理によって防除する(図3)。入水時(イネ2~3葉期)に防除が不十分な場合は、入水前にイネごとフレールモアで切断後ただちに入水し、ネズミムギを水没させて枯死させる。イネも水没するが、生育は回復する。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 普及指導機関、営農指導員、水稲生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : オモダカ、クログワイ、グリホサート抵抗性ネズミムギが発生する直播栽培水田。
- その他 : 本成果は、普及指導機関、営農指導員等が生産現場で取り組めるようマニュアルとしてとりまとめ、インターネット上で公開している。また、オモダカ、クログワイおよびグリホサート抵抗性ネズミムギは温暖地での試験で得られたものである。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:雑草イネ)
- 研究期間 : 2019~2023年度
- 研究担当者 : 小荒井晃、北川壽、大段秀記、住吉正、保田謙太郎(秋田県立大学)、露﨑浩(秋田県立大学)、伊藤幸司(愛知県農総試)、杉浦和彦(愛知県農総試)、森崎耕平(愛知県農総試)、福田充洋(愛知県農総試)、柏木啓佑(愛知県農総試)、森田真菜(愛知県農総試)、伊藤 真(愛知県農総試)、遠山孝通(愛知県農総試)、浅野智也(愛知県農総試)、伊藤晃(愛知県農総試)、尾賀俊哉(愛知県農総試)、大黒貴智(愛知県農総試)、船生岳人(愛知県農総試)、久野智香子(愛知県農総試)、犬飼千裕(愛知県農総試)、日置雅之(愛知県農総試)、濱村謙史朗(植調協会)、金久保秀輝(植調協会)、古山千恵(植調協会)、橋本仁一(植調協会)、阿部秀俊(植調協会)、西田勉(植調協会)、古賀巧樹(植調協会)、中下真吾(植調協会)、山口晃(植調協会)、稲垣貴之(植調協会)
- 発表論文等 :