要約
コーン型フェロモントラップはチョウ目害虫の調査によく用いられるSEトラップよりもウコンノメイガを約25倍多く捕獲することができる。また、本トラップはウコンノメイガの発生量の少ない圃場でも発生を検出することができることから、発生予察技術の高精度化が可能になる。
- キーワード : ウコンノメイガ、フェロモントラップ、発生予察、コーン型トラップ、ダイズ
- 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・海外飛来性害虫・先端防除技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ウコンノメイガは主に北陸地方で問題となるダイズの害虫である。7月中下旬ごろに越冬世代成虫がダイズ圃場に侵入し、次世代幼虫が葉を食害することで子実の小粒化を引き起こす。侵入した成虫の発生量調査には叩き出し法(ダイズの草冠を棒で叩き、飛び出してきた成虫の数を数える)が用いられているが、労力と時間がかかることが問題となっている。これに代わる簡易な方法としてSEトラップを用いたフェロモントラップの利用が検討されたことがあったが、捕獲効率が悪く実用化には至っていない。コーン型トラップはツトガ科のヨーロッパアワノメイガやコブノメイガの捕獲効率に優れることから、同じツトガ科のウコンノメイガも高効率で捕獲できると予想された。そこで本研究では、コーン型トラップとSEトラップの捕獲数を比較することで、コーン型トラップがウコンノメイガの捕獲に適していることを明らかにする。また、ダイズ圃場での本種の発生消長とコーン型トラップへの誘殺消長を比較することで、発生予察への利用の可能性を検討する。
成果の内容・特徴
- コーン型トラップ(図1)は下部の円錐(透明な硬質塩ビ板で作成)と上部の捕獲用タッパーで構成され、円錐内にフェロモンルアーが、タッパー内に殺虫剤プレートが入る。
- 同一成分のフェロモンルアーを取り付けて捕獲数を比較したところ、コーン型トラップはSEトラップに比べて約25倍のウコンノメイガを捕獲した(図2)。また、コーン型トラップの初捕獲日はSEトラップの11日前であった。コーン型トラップはSEトラップよりもウコンノメイガを早く、多く検出することができる。
- 2018年はウコンノメイガの発生が少なく、調査した3圃場のうち2圃場では叩き出し法による調査で成虫が確認できなかった。一方で、コーン型トラップは越冬世代成虫のダイズ圃場への侵入と考えられる誘殺ピークを検出できた(図3)。コーン型トラップは叩き出し法よりも本種の検出感度が高いと考えられる。
成果の活用面・留意点
- コーン型トラップを使用することで、ウコンノメイガの発生量調査の省力化が可能になる。さらに、叩き出し法で検出されないほど低密度の圃場でもウコンノメイガを捕獲できることから、調査の高精度化も可能になる。
- コーン型トラップを発生予察に利用するためには、ウコンノメイガの捕獲数と幼虫による被害葉数や収量との関係を解析する必要がある。
- ウコンノメイガのフェロモン成分はすでに明らかになっているが、フェロモンルアーは現在市販されていない。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(病害虫の効率的防除体制の再編委託事業)
- 研究期間 : 2017~2023年度
- 研究担当者 : 渋谷和樹、遠藤信幸、竹内博昭
- 発表論文等 : Shibuya K. et al. (2023) Appl. Entomol. Zool. 58:329-334