要約
ブドウの輸出拡大の障壁となっている輸出相手国の残留農薬基準をクリアする防除暦作成のために必要な情報をまとめた指針である。本指針は主要病害虫と薬剤選定の留意点、台湾向け防除暦案、残留農薬分析の実施方法、残留農薬分析結果の実例集等から構成される。
- キーワード : ブドウ、輸出拡大、輸出向け防除暦、残留農薬基準、残留分析
- 担当 : 植物防疫研究部門・果樹茶病害虫防除研究領域・果樹茶生物的防除グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
我が国の政府が掲げるブドウ輸出拡大の目標達成のためには、検疫対象害虫の混入を防止するとともに、各国が定める農薬の残留基準をクリアする果実を生産する必要がある。しかし、残留農薬基準は国ごとに異なり、我が国の通常の防除体系で使用される農薬の中には、輸出相手国の基準値設定が無い、あるいは我が国の基準値に比べて低く設定されているものがある。このような理由から特に台湾で基準値超過による不合格事例が多発し輸出拡大の妨げとなっている。そこで本研究では、輸出相手国の残留農薬基準に対応したブドウの輸出対応型防除暦案をもとに防除試験を行い、検疫対象病害虫に対する防除効果の検証と残留農薬分析を実施による残留量の確認を行うとともに、得られた情報をもとに、ブドウの輸出向け防除暦作成のための指針を作成し、ブドウ輸出を目指す産地における防除暦作成を支援することを目的としている。
成果の内容・特徴
- 本指針は、輸出用防除体系構築フローチャートに従い、ブドウの輸出相手国・地域の設定から生果実の輸出までの手順を示す構成となっている(図1)。
- 「輸出相手国・地域の検疫条件、要防除病害虫の確認」では、輸出の際に農薬での防除が必要となる主要な病害虫について生態、被害、防除法を解説し、薬剤選定の留意点を示している(図2)。
- 山形県および広島県における3年間の防除試験結果および残留農薬試験結果に基づき、2通りの台湾向けシャインマスカット防除暦案を提示している(表1)。
- 実例集として、慣行および台湾向け防除体系における農薬残留分析結果(表2)と、発芽期から収穫までの散布時期別の残留農薬検出量(ここではデータ略)を掲載している。
- 指針を活用することで、ブドウ輸出を目指す産地において、輸出相手国ごとに異なる残留農薬基準に対応した防除暦の作成が容易となり、我が国のブドウ輸出拡大に貢献することが期待される。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 普及指導機関および生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国の輸出向けブドウ産地および輸出を検討している産地。
- その他 : 本指針は2024年3月24日時点の情報にもとづいて作成した。各国のMRLおよびわが国での農薬登録内容は随時見直されているため、確認が必要である。
具体的データ

その他