茶の輸出に対応した防除暦の作成指針

要約

茶の輸出に対応した病害虫防除暦を作成するための指針である。各産地のニーズに合わせて、輸出相手国の残留農薬基準(MRL)に適合し、かつ病害虫を十分に抑えることができる防除暦を作成することにより、輸出用茶の安定生産が可能となる。

  • キーワード : 茶、防除暦、輸出、残留農薬基準
  • 担当 : 植物防疫研究部門・果樹茶病害虫防除研究領域・果樹茶生物的防除グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

農産物の輸出において残留農薬基準(MRL)が輸出相手国によって異なることが障壁の一つとなっている。特に茶は多くの輸出相手国において自国内では栽培されていないため、MRLの設定において農薬としての使用が考慮されておらず、極めて低い一律基準値や検出限界値が適用されている農薬成分が多い。茶の輸出拡大においては、従来の一番茶に加えて、二番茶・秋冬番茶の輸出拡大が鍵となる。しかし、病害虫の発生が多い夏期に栽培される二番茶や秋冬番茶では、病害虫による被害を十分に抑えた上で輸出相手国のMRLに対応することが困難であった。そこで、本研究では全国の茶産地においてそれぞれの産地ニーズに対応した輸出用二番茶・秋冬番茶の安定生産を可能とするための輸出対応型防除暦の作成指針を策定する。

成果の内容・特徴

  • 本指針は茶の輸出に対応した防除暦の作成手順及び留意点と、茶の病害虫防除に使用されるおもな農薬成分の主要輸出相手国におけるMRLおよび茶における残留特性を示したものである(図1)。
  • 本指針に基づいて国内5県の実証地でそれぞれの産地ニーズ(表1)に対応して作成した輸出対応型防除暦(表2)によって病害虫の発生を慣行防除と同等以下に抑制でき、生産された一番茶、二番茶および秋冬番茶の残留農薬濃度は輸出相手国のMRLに適合する。
  • 本指針において輸出対応型防除暦を例示した地域以外の茶産地でも、本指針を利用することによってそれぞれの産地ニーズに対応した輸出対応型防除暦を作成することが可能となり、茶の輸出拡大が進むことが期待される。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 茶の生産・栽培指導機関(公設試・普及指導機関、JA、農業生産法人など)。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国の輸出用茶栽培地域5,000ha。
  • その他 : 本指針は2024年1月1日時点の情報にもとづいて作成した。各国のMRLおよびわが国での農薬登録内容は随時見直されているため、確認が必要である。

具体的データ

図1 茶の輸出に対応した防除暦の作成指針,表1 実証地と産地ニーズ,表2 作成・実証した防除暦の一例

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 山田憲吾、佐藤安志、須藤正彬、萬屋宏、羽野愛理、吉田克志、小澤朗人(静岡農専大)、妹川知史(福岡県農林試八女)、川越洋二(宮崎県総農試茶支)、下津文宏(鹿児島県農開セ)、村松浩明(伊藤園)
  • 発表論文等 : 農研機構(2024)「輸出相手国の残留農薬基準に対応した茶の輸出対応型防除暦の作成指針」(2024年9月2日)