要約
野外での試験が制限される特定外来生物ツヤハダゴマダラカミキリ等の果樹への寄生可能性を、飼養が許可された室内で評価する方法であり、評価対象の果樹の切枝を用いて「誘引性」「摂食選好性」「産卵選好性」それぞれを好適寄主の切枝と比較する。
- キーワード : 外来カミキリムシ、特定外来生物、生物検定、寄生、果樹
- 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・海外飛来性害虫・先端防除技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ツヤハダゴマダラカミキリ(Anoplophora glabripennis)(図1)は、2020年に国内で発生が確認されて以降、現在までにその被害は14都県にまで広がり、2023年9月には特定外来生物に指定された。本種は樹木の穿孔性害虫であり、幼虫が樹皮下を食害し、ひどい場合は枯死させる。本種の寄主範囲は大変広いが、日本国内での樹木被害がみられるのは、現在のところ主にカツラ科、ニレ科、トチノキ科、ヤナギ科などの植栽で、日本においてはこれらが本種の好適寄主と考えられる。しかし海外ではバラ科のリンゴ樹にも被害があるとの報告があり、日本の果樹栽培関係者から不安の声が上がっている。
ツヤハダゴマダラカミキリは、特定外来生物であり野外での試験は制限される。そこで、飼養を許可された室内で果樹への寄生可能性を評価する方法を開発する必要がある。評価したい果樹(バラ科のリンゴ、ナシ、モモ、ウメ、オウトウ)の切枝を用いて、室内実験にて果樹枝のにおいへの誘引性、摂食選好性、および産卵選好性について、それぞれ好適寄主のカツラと比較する生物検定を行い、得られた結果で寄生可能性を室内において評価する方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 5種のバラ科果樹枝のにおいへの誘引性の生物検定では、切枝のにおいに対して向かう行動を示した成虫の割合を好適寄主のカツラと比較する。においへの誘引性の生物検定の結果では、オス成虫はオウトウとナシ枝にはカツラ枝と同等に誘引されるが、産卵を担うメス成虫はどの枝のにおいにも誘引されない(図2)。
- 摂食選好性の生物検定では、寄主カツラ枝と果樹枝を同時に並べて成虫に与え、24時間後の各枝への摂食面積を比較する。摂食選好性の生物検定の結果では、いずれの果樹枝も摂食が確認できるが摂食量は少なく、その選好性はカツラ枝に比べ有意に低い(図3)。
- 産卵選好性の生物検定では、寄主カツラ枝と果樹枝を同時に並べてメス成虫に与え、2日後の各枝への産卵数を比較する。産卵選好性の生物検定の結果では、ナシ枝への選好性がカツラ枝と同程度だが、他の果樹枝への選好性は有意に低い(図4)。
- 寄生の可能性は、上記のにおいへ誘引性、摂食選好性、産卵選好性の3つの生物検定法の結果を合わせて総合的に判断する。本種は産卵選好性が高い樹種であっても、誘引性や摂食選好性が低い結果であったため、調査した5種の国内のバラ科果樹いずれへも寄生する可能性は低いと推測される。
成果の活用面・留意点
- 日本の樹木への侵略的外来種の寄生の可能性を判断する評価方法として、寄生の可能性の基礎情報を得るツールとして役に立ち、都道府県の公設試等が樹木被害を予測して注意喚起や防除に貢献することが期待される。
- ツヤハダゴマダラカミキリがバラ科果樹に寄生する可能性は低いと考えられる。しかし、野外において、寄生される可能性は皆無ではないため、本種の被害地域や隣接する果樹栽培地では本種による果樹被害が疑われる兆候がないか注意深く見守ることが推奨される。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 安居拓恵、辻井直、釘宮聡一、渋谷和樹、三代浩二、上地奈美
- 発表論文等 : Yasui H. et al. (2024) Scientific Reports 14:12708
doi:10.1038/s41598-024-63548-0