tomato brown rugose fruit virusのナス科作物における種子伝染の諸性質

要約

tomato brown rugose fruit virusはトマトだけでなくピーマンにおいても種子伝染する。種子伝染するトマトやピーマンとしないナスの間では、種子の種皮におけるウイルスの蓄積の有無に明瞭な差が認められる。トマトでは種子発達過程の胚珠の珠皮で感染が認められる。

  • キーワード : tomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)、種子伝染、トマト、ピーマン、ナス
  • 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・越境性・高リスク病害虫対策グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2014年にイスラエルで発生した新種トバモウイルスのtomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)は、主にトマトで被害を生じ、種子伝染するため、汚染種子の流通を通じ、世界各国には分布を広げていると考えられる。ToBRFVはトマトだけでなくピーマンやナス等のナス科作物にも全身感染するが、これらにおける種子伝染性は調査されていない。そこで本研究では、トマトに加え、ピーマン、ナスにおける種子伝染性および種子の汚染を調査する。また種子伝染の有無を決定している要因の解明を試みる。

成果の内容・特徴

  • ToBRFVが全身感染したトマト、ピーマン、およびナスから採取した種子は、いずれも感染性を有するウイルスを多量に保持している(図1)。また、RT-PCRで全粒とも陽性となるが、汁液接種による局部壊死斑点の数には、作目間で多寡が認められる(表1)。
  • 種子伝染率(汚染種子の発芽個体の感染株率)は、トマト2品種でともに約5%であったのに対し、ピーマンでは約10%を示した。ナス3品種では、いずれも種子伝染は認められなかった(表1)。
  • トマト、ピーマン、ナスの汚染種子の切断面に対して、ToBRFV外被タンパク質に対する抗体を用いた免疫染色を行うと、トマトとピーマンでは、種皮組織内にウイルスの蓄積が認められるのに対して、ナスでは蓄積は認められない(図2)。ただしナス種皮の表面には染色が認められるため、ナス種子も表面はウイルスに汚染されうる。
  • ToBRFV感染トマト株の種子形成過程におけるウイルスの感染部位をin situ hybridization法により可視化すると、開花期には子房の基部や維管束の一部のみに感染しているが、受粉後には、将来種皮に分化する胚珠の珠皮に感染が認められる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • トマトだけでなくピーマンでもToBRFVの種子伝染が認められたことから、ピーマンにおいても種子伝染の可能性を考慮する必要がある。
  • 種子伝染が認められなかったナスにおいても、多量の感染性をもつウイルスが種子表面等に付着していることに加え、ナスでは全身感染してもほとんど症状は生じないことから、ナス種子においてもToBRFV汚染種子を介したウイルスの拡散が起きる可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業:Tomato brown rugose fruit virusの多検体診断技術及び防除技術の開発)
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 松下陽介、竹山さわな、冨高保弘、松山桃子、石橋和大、篠坂響、大﨑康平、久保田健嗣
  • 発表論文等 :
    • 久保田ら(2023a)日植病報、89:225-234
    • 久保田ら(2023b)日植病報、89:235-244
    • Matsushita Y. et al. (2024) J. Gen. Plant Pathol. 90:23-34