tomato brown rugose fruit virusの汚染種子および汚染器具の各種消毒法の効果

要約

トマト等の重要病原体であるトバモウイルスのtomato brown rugose fruit virusに対する消毒法として、次亜塩素酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が利用できる。種子消毒には70°Cまたは80°Cで24時間の乾熱処理も有効である。

  • キーワード : tomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)、汁液伝染、種子伝染、トマト
  • 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・越境性・高リスク病害虫対策グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2014年にイスラエルで発生した新種トバモウイルスのtomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)は、種子伝染性および汁液伝染性を有する。日本では未発生であるが、ToBRFV汚染種子による国内侵入を抑制するとともに、万一国内のトマト等作物で発生した場合に備え、圃場での感染株汁液で汚染された器具を介した拡大リスクを低減させるための技術が求められる。本研究では、既存のトバモウイルスに用いられる種子や汚染器具に対する消毒技術について、ToBRFVに対する有効性を評価、検証する。

成果の内容・特徴

  • ToBRFV感染トマト株から採取した汚染種子に対して、5%リン酸三ナトリウム溶液またはアンチホルミン(有効塩素濃度2.5%以上)で15分処理すると、ToBRFVの感染性はほぼ検出されなくなり、種子伝染も全く認められなくなる(表1)。同様に、乾熱処理(70°Cまたは80°Cで24時間処理)でも、感染性および種子伝染性は検出されない。
  • ただし、消毒後に感染性ウイルスが検出されなくなった種子であっても、種子検査等で用いられるRT-PCR法では、感染性はないが残存するウイルスRNA断片からの増幅が生じ、検査結果としては陽性と判定されうる(図1)。
  • 感染トマト葉粗汁液で汚染した使い捨てカミソリ刃を模擬的な汚染器具として、各種薬剤で処理した場合、5%リン酸三ナトリウム、1%消石灰、または家庭用漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度1%相当)で1時間処理すると、トマト株への切りつけ接種で、感染は起こらなくなり、有効と考えられる(表2)。70%エタノールおよびオキシドールには効果は全く認められない。

成果の活用面・留意点

  • 種子消毒効果のデータは小規模な実験に基づくものであり、実用的な規模での消毒効果については、さらに検証が必要である。
  • 汚染器具の消毒において、家庭用漂白剤は、開封後に日数が経過すると、次亜塩素酸の分解、揮発等により効果が低減する可能性に留意が必要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業:Tomato brown rugose fruit virusの多検体診断技術及び防除技術の開発)
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 久保田健嗣、竹山さわな、松下陽介、冨高保弘、松山桃子、石橋和大、篠坂響、大﨑康平
  • 発表論文等 :
    • 久保田ら(2023a)日植病報、89:225-234
    • 久保田ら(2023b)日植病報、89:235-244
    • Matsushita Y. et al. (2024) J. Gen. Plant Pathol. 90:23-34