要約
シソモザイクウイルスは10分節RNAを有し、うち相同なタンパク質をコードする複数のRNA分節は国内分離株に共通して保存されている。ただし、グリコプロテイン前駆体をコードするRNA2をもたない分離株がある。日本の分離株は遺伝的に東日本型と西日本型に大別される。
- キーワード : Perilla mosaic virus(PerMV)、エマラウイルス属、フィモウイルス科、分節RNA、シソサビダニ
- 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・越境性・高リスク病害虫対策グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
2000年頃から高知県の青シソ栽培施設で問題となったシソモザイクウイルス(Perilla mosaic virus、PerMV)は、分離株のゲノム解析の結果、分節RNAとしてRNA1、2、3a、3b、4、5、6a、6b、6c、7の計10分節から構成され、動物、植物ウイルス約600種を含むブニヤウイルス綱(Bunyaviricetes)の中で最多とされる。しかし、韓国で発生したPerMVはRNA1-7の計7分節のみが報告され、PerMVの分節数が異なる。そこで、国内遠隔地の4県で発生した分離株の全長ゲノム配列を解読、分節RNAの構成を確認する。さらに、4県から採取した計21分離株について、RNA1-RNA4の部分配列を解読し、国内分離株の遺伝的多様性を把握することにより、シソにおける病原性、宿主範囲や媒介性の差異の有無の可能性や、RT-PCR法による検出の標的に適した共通保存領域の探索などに資する基礎情報を得る。
成果の内容・特徴
- 新たに調査した茨城県の2株、愛知県の1株および大分県の1株はいずれも、高知株で確認されたRNA1-RNA7の計10分節を保持する(図1)。重複するヌクレオキャプシドタンパク質(NP)をコードするRNA3aおよび3b、ならびに機能不明なタンパク質をコードするRNA5、6a、6b、6c、7も広く保存されている。
- 各タンパク質の全長ORFをコードする塩基配列の分子系統樹解析により、全ての分節は、茨城県の株(東日本型)と、高知・大分の株(西日本型)とで異なるクレードに属する(図1)。愛知県の株は、RNA1と3bは前者と、それ以外の分節は後者と同じクレードに属し、遺伝的な多様性が高い。RNA1、2、3a、3b、4の部分配列の部分系統樹解析も同様に、東日本型と西日本型に大別され、愛知県の株はRNA1と3bは前者と、RNA2、3a、4は後者と同一クレードを形成する(図2)。
- シソサビダニ媒介に必要と予想されるグリコプロテイン前駆体(GPP)をコードするRNA2が検出されない分離株が、4県とも見いだされる。いずれもシソサビダニ防除がなされている栽培圃場からの分離株である(図2)。
成果の活用面・留意点
- これまでPerMVの性質として報告された宿主範囲や媒介性に関する情報は、高知株のもののみであるため、遺伝的に異なる東日本型の株については、異なる性質をもつ可能性に留意する必要がある。
- PerMVの塩基配列は東日本と西日本とで相違が大きいことから、RT-PCR法やRT-LAMP法による遺伝子診断のプライマー設計には、この点を考慮する必要がある。なお、農研機構が公開している「オオバのシソサビダニおよびシソモザイクウイルス検出マニュアル第3版」に記載のRT-PCR法およびRT-LAMP法による検出法は、この遺伝的多様性を踏まえて設計されている。また、RNA2を保持しない分離株の存在の可能性があるため、RNA2を標的に設計することは避ける。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 千秋祐也、久保田健嗣
- 発表論文等 : Chiaki Y. and Kubota K. (2025) J. Gen. Plant Pathol. 91:41-50
doi:10.1007/s10327-024-01203-2