要約
リンゴの樹周りの有機質資材の施用により、周辺土壌に生息するコナダニ類が増加し、それらを餌とする土着カブリダニ類の個体数が間接的に増加する。本手法により土着カブリダニ類を保全し、ハダニ類の発生密度を抑制することが期待できる。
- キーワード : 有機質資材、コナダニ、カブリダニ、天敵保全、減農薬
- 担当 : 植物防疫研究部門・果樹茶病害虫防除研究領域・検疫対策技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
リンゴ栽培において最も重要な害虫であるハダニ類を制御するための天敵として、カブリダニ類が挙げられる。しかし、リンゴ園におけるカブリダニ類の餌源に関する知見は限られており、自然発生するカブリダニ類を人工的に増やすことは現状困難である。カブリダニ類の密度を強化するためには、ハダニ類以外の餌を特定し、その増殖への影響を明らかにすることが重要である。本研究では、室内での捕食・産卵試験とリンゴ園での有機質資材施用試験により、有機質資材がケナガコナダニ類を増殖させ、カブリダニ類の密度増加に寄与することを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 野外の畑から採取した土壌、市販の粒状有機肥料(有機アグレット666号/原料になたね粕・フェザーミール・魚かす・パーム灰を含む)、ココナッツハスクは長期間冷蔵し、土壌動物を除去したものを使用した。これらを混合し、5mLのガラスボトルに加えたものを有機質資材施用区とした。この混合土に10匹のケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)の雌成虫を9~10回繰り返し導入し、25°C、相対湿度約100%の環境下で4週間培養すると、有機質資材を餌としてケナガコナダニの個体数が増加する(図1)。
- 天敵生物として挙げられるカブリダニ類のうち、ニセラーゴカブリダニ(Amblyseius eharai)、ミチノクカブリダニ(Amblyseius tsugawai)、フツウカブリダニ(Thphlodromus vulgaris)がケナガコナダニの幼虫を捕食し、餌として利用して産卵することが確認される(図2)。このことから、一部のカブリダニ類はケナガコナダニ類をハダニ類の代替餌として利用可能である。
- リンゴ園において有機質資材(粒状有機肥料およびココナッツハスク)をリンゴ樹の根本に施用することにより、園内に生息するカブリダニ類の密度が増加し、ハダニ類の発生を抑制できる可能性がある(図3)。ただし、実圃場での実証試験を通じた条件設定が必要である。
成果の活用面・留意点
- 今後、実圃場での実証試験により検証を行い、有機質資材の施用によりハダニ類の天敵防除が促進されることが明らかにできれば、化学農薬の使用量低減につながることでハダニ類の薬剤抵抗性発達遅延に貢献する技術となる。
- 有機質資材を含む有機肥料の特性として、化学肥料と比較して施肥効果が得られるまで時間が掛かること、処理重量が大きく散布に労力がかかることから、既存の化成肥料から代替えする場合には有機肥料の割合等を考慮した肥培管理が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2022~2024年度
- 研究担当者 : 駒形泰之(宮城県農園研)、大江高穂(宮城県農園研)、関根崇行(宮城県農園研)、新村瑠里、外山晶敏、岸本英成
- 発表論文等 : Komagata Y. et al. (2024) Experimental and Applied Acarology 93:583-595