侵入害虫パパイヤコナカイガラムシのオス成虫を誘引するフェロモン

要約

侵入害虫パパイヤコナカイガラムシのメス成虫がオス成虫を誘引するフェロモンは(-)-2-[(1S,2S)-1-メチル-2-イソプロペニルシクロブチル]エタン-1-オールである。本物質は早期検出に有効なフェロモントラップ用誘引剤として活用できる。

  • キーワード : 侵入害虫、フェロモン、フェロモントラップ、発生予察、検出
  • 担当 : 植物防疫研究部門・果樹茶病害虫防除研究領域・果樹茶生物的防除グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

パパイヤコナカイガラムシ(Paracoccus marginatus)は中米原産の昆虫であるが、2000年代以降、南アジアやアフリカをはじめとする世界各地に分布域を拡大し、様々な果樹や果菜等の農作物に被害を与えている。日本では2018年に沖縄本島への侵入及び定着がはじめて報告され、南西諸島で分布域が拡大しており、パパイヤ等で被害が確認されている。さらなる分布拡大を防ぐためには、本種の発生状況を的確に把握する必要がある。そこで、パパイヤコナカイガラムシだけを強力に誘引するフェロモンの化学構造を明らかにし、侵入の有無の早期検出を確実かつ簡便に行うことができるフェロモントラップの開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • パパイヤコナカイガラムシ(図1)のメス成虫3,780頭分の匂い物質から単離した、オス成虫を誘引するフェロモン成分について、核磁気共鳴スペクトル・質量スペクトル・キラルカラムクロマトグラフィーに基づく分析結果が示す化学構造は(-)-2-[(1S,2S)-1-メチル-2-イソプロペニルシクロブチル]エタン-1-オールである(図2)。本物質は一部のキク科植物の精油に含まれ、フラグラノールという慣用名で知られている。一方、昆虫の誘引活性成分としての報告はこれまでにない。また、コナカイガラムシのフェロモンは一般にエステルであるが、本事例はこの化合物群の中では初めてのアルコールである。
  • このフェロモンは既知の手法で立体選択的に合成することができる。
  • 合成したフェロモン(0.1mg)を誘引源とした粘着トラップ(11×22cm)には多くのオス成虫が捕獲される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • フジコナカイガラムシをはじめとする他種のカイガラムシ類のフェロモンは、すでにフェロモントラップ用誘引剤として発生予察・検出に利用されている。将来的には本種のフェロモンも同様の用途で使える可能性がある。
  • 鏡像体である(+)-体に誘引を阻害する活性は全くない。そのため、この物質を合成する過程で(+)-体が混入しても誘引性に支障はなく、実用上はラセミ混合物として合成したものを使用することができる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 菅原有真、田端純、上里卓己(沖縄病害虫防技セ)
  • 発表論文等 :
    • 菅原、田端、特願(2024年2月22日)
    • Sugawara Y. et al. (2025) J. Chem. Ecol. 51:22