ウンシュウミカン輸出検疫措置としてのシステムズアプローチのミカンバエ対策の有効性

要約

ミカンバエについて園地の選択、薬剤防除および寄生疑義果実の除去を組み合わせた対策を5年間実証した結果、実証園では多数の収穫果実を切開調査しても寄生果は発見されず、トラップでの成虫の捕獲も確認できない。本対策はウンシュウミカンの輸出検疫措置として活用できる。

  • キーワード : ミカンバエ、ウンシュウミカン、システムズアプローチ、トラップ、輸出検疫
  • 担当 : 植物防疫研究部門・果樹茶病害虫防除研究領域・検疫対策技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ウンシュウミカンの輸出相手国・地域を増やすためには、それら国・地域から要求されるミカンバエに対する輸出検疫措置を確立する必要がある。一般的に、輸出検疫措置として低温、くん蒸、放射線処理等による消毒処理があるが、完全殺虫を満たす処理を行うと果実の種類、品種によっては障害が起きることもあるため、近年では園地段階での複数防除手段、選果段階での被害果実除去、障害を起こさない条件での消毒処理等を組み合わせて被害果の発生を非常に低いレベルに抑える手法、すなわちシステムズアプローチが注目されている。そこで本研究では栽培園地の選択、適切な防除体系の実施、異常果実(寄生が疑われる果実)の除去を組みわせた措置により、園地段階で、ミカンバエ寄生果実の発生が輸出検疫措置として有効である水準まで低下することを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ミカンバエのシステムズアプローチにおける措置の組み合わせを図1に示す。
  • 2017-2021年に、日当たり良好で開けた環境にありミカンバエ発生に不適なウンシュウミカン園地(図2左)を実証園地として3~5箇所選定し、薬剤防除および、早期着色・落果を指標に発見した寄生疑義果実の除去を実施する。比較対照に、実証園で実施した薬剤防除や寄生疑義果実の除去を一切行わない放任・管理不良園等を2~3箇所確保する。
  • 実証園地での薬剤防除として、成虫発生期の7月にエチプロール・シラフルオフェン混合剤、幼虫孵化期の8月にアセタミプリド剤等、虫のステージに応じた効果の高い殺虫剤を散布する。エチプロール・シラフルオフェン混合剤が散布された葉上に放された成虫は2日以内に全て死亡し、ミカンバエの発生がある管理不良園においてアセタミプリド剤の散布により被害果率を2.6-5.3%(無処理区69.9-80.0%)に抑えられることを事前に確認している。
  • 実証園地では着色期に合計724,296個の果実を目視し、1,027個の寄生疑義果実を除去して切開調査するが幼虫寄生果は発見されず、収穫果実58,193個を切開調査しても幼虫は発見されない(表1)。
  • 対照園地からは寄生果(図2右下)が毎年発見され、寄生果率も高い(表2)。
  • タンパク質加水分解物とシトロネラオイルを誘引源に用いたガロン型トラップによる成虫発生調査(図2中央)を行い、実証園地では5年間を通じて成虫(図2右上)は全く捕獲されない(表1)。一方、同じ地域に対照園地として設定したミカンバエ発生園では毎年成虫が捕獲される(表2)。
  • 切開調査による寄生果実ゼロの結果から、被害率がどの程度になるかを統計的に推定する。危険率をa、ゼロサンプルの連続数をNとした時の限界被害率pは、p=-ln(a)/Nで求められ、この式に切開調査果数N=58、193、危険率a=0.05を代入すると限界被害率はp=0.00515%(0.0000515)となる。この値は、消毒処理で要求されるプロビット9という99.9968%の殺虫処理基準をやや下回る程度である。このように実証園での寄生果実の発生は無視できる程度に低く、複数手段を組み合わせたミカンバエ防除はウンシュウミカンの輸出検疫措置として有効である。

成果の活用面・留意点

  • 成虫防除剤として用いたエチプロール・シラフルオフェン混合剤は製造中止のため農薬登録が失効する(2023年3月31日)。このため、本剤と同等の殺虫効果を持ち、2024年にミカンバエに登録されたエトフェンプロックス水和剤を代替農薬として利用する。
  • 二国間交渉の際の科学的根拠として活用されることが期待される。
  • 本研究での圃場段階でのミカンバエに対する検疫措置に加えて、選果処理、病害等を対象にした果実消毒処理によってウンシュウミカンの輸出検疫措置が確立される。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(我が国の輸出に有利な国際的検疫処理基準の確立、実証委託事業)
  • 研究期間 : 2017~2021年度
  • 研究担当者 : 新井朋徳、三代浩二、望月雅俊、岡崎芳夫(山口県農総セ)、東浦祥光(山口県農総セ)
  • 発表論文等 :
    • Mochizuki M. and Narahara M. (2022) Appl. Entomol. Zool. 57:37-43
    • Mochizuki M. et al. (2024) Appl. Entomol. Zool. 59:317-329