発生消長データと気象データを用いて機械学習により害虫の発生時期を予測する手法

要約

有効積算温度モデルによる害虫の発生時期予測のために、野外における害虫の発生データと気温データから最適な予測零点と有効積算温度の値(パラメータ)を決定する手法である。四国4県のセジロウンカのデータを用いた機械学習で従来法より3日の予測精度の向上が認められる。

  • キーワード : 害虫発生予察、有効積算温度モデル、機械学習、セジロウンカ
  • 担当 : 植物防疫研究部門・作物病害虫防除研究領域・病害虫防除支援技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

従来、害虫の発生時期の予測には有効積算温度モデルが広く活用されている。この手法は、室内での飼育試験によって必要なパラメータを決定する必要がある。飼育試験では餌、気温、湿度等の環境が野外と異なる場合があり、野外の発生時期の予測に必ずしも適さないこと、予測精度が悪い場合にパラメータの補正が困難であること等の課題がある。また、室内飼育が困難な害虫種についてはパラメータを決定することができないため、従来法に代わる有効積算温度モデルのパラメータ決定方法が求められている。
そこで本研究では、セジロウンカを例に、従来の飼育試験ではなく、これまでに蓄積された野外の発生データと気温データから、害虫の発生時期の予測に最適なパラメータを決定する機械学習手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本手法は複数の害虫発生データと気温データから、任意に設定した予測零点(計算上は発育零点と同等の役割を持つ変数)における有効積算温度とその平均値を計算する(図1)。各データから計算された有効積算温度の変動係数(CV)を算出し、変動係数が最小となる予測零点と、その予測零点で計算された有効積算温度の平均値を最適なパラメータとして決定する(図2)。
  • 四国4県における予察灯から得られたセジロウンカの49の発生データ(1980~2000年)を用いたパラメータの決定および31のデータ(2001~2020年)を用いた精度検証の結果、その予測精度は従来法よりも約3日向上したことが確認できる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 各都道府県の公設試や民間企業で蓄積された害虫の発生消長の過去データと最寄りの地点の対応する過去の気温データを得ることにより、発生時期を予測するためのパラメータ決定に活用できる。本成果の活用には特許許諾の手続きが必要である。
  • 今後、他地域・他害虫種におけるパラメータの推定を実施し、現地実証に基づく予測精度の向上とその有用性を確認することにより、民間企業が運営する農業支援サービス等で、本手法で決定したパラメータを利用した害虫の発生予測に活用できる。
  • 本研究で決定した予測零点および有効積算温度は、発生時期の予測における最適なパラメータであり、実際の発育に関わる値ではない。
  • 本研究は四国4県のセジロウンカで試験したもので、他地域・他害虫種の場合は結果が異なる可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進:省力的なIPMを実現する病害虫予報技術の開発)
  • 研究期間 : 2021~2024年度
  • 研究担当者 : 佐々木郁弥、松倉啓一郎、柴卓也(龍谷大)
  • 発表論文等 :
    • Sasaki F. et al. (2024) Ecol. Model. 490:110651 doi:10.1016/j.ecolmodel.2024.110651
    • 佐々木ら「生育予測プログラムおよび生育予測方法」特許第7555167号(2024年9月12日)