セジロウンカはイネ南方黒すじ萎縮ウイルス初発の2001年よりも前から媒介能力を有する

要約

中国大陸から日本国内に飛来したセジロウンカのうち、1989年と1999年に採集された系統は2010年採集系統と同様に、イネ南方黒すじ萎縮ウイルス(SRBSDV)の媒介能力をもつことから、この媒介能力はSRBSDVの初発年である2001年より前からこのウンカが有する一般的な形質である。

  • キーワード : 飼料用米、昆虫媒介性ウイルス、海外飛来性害虫、リアルタイムqPCR、新興ウイルス
  • 担当 : 植物防疫研究部門・作物病害虫防除研究領域・病害虫防除支援技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

イネ南方黒すじ萎縮病は2001年に中国で、2010年に国内で初発生が確認されたイネの病害であり、主に飼料用米に被害を引き起こす。病原体はイネ南方黒すじ萎縮ウイルス(SRBSDV)であり、セジロウンカによって媒介されることが確認された最初の植物ウイルスである。このウンカは日本国内では越冬できないものの、毎年梅雨の時期に中国大陸から日本に飛来してくる。そのため、セジロウンカによるSRBSDVの媒介能力が、このウンカが以前から一般的に有していた能力であるのか、あるいはSRBSDVを媒介できる特定のバイオタイプが出現したのかを明らかにすることは、今後飛来してくるセジロウンカによってもたらされるSRBSDVの感染リスクを評価するうえで重要な情報となる。
そこで、本研究ではSRBSDVの初発年である2001年よりも前の1980年代、1990年代に野外から採集した個体を起源とするセジロウンカの累代飼育系統を用い、セジロウンカがどの時期からSRBSDVの媒介能力を有しているのかを検証する。

成果の内容・特徴

  • 1989年に福岡県で、1999年に熊本県で採集したセジロウンカをそれぞれ起源とし、実験室内でイネ芽だしを用いて継代し続けている累代飼育系統(系統名はそれぞれ「WBPH1989」「WBPH1999」)のオス成虫を、SRBSDVに感染した分げつ期の水稲に5日間放飼すると、各系統のオス成虫体内でSRBSDVが増殖する。増殖の程度は、SRBSDVの発生が確認された後である2010年に熊本県で採集したセジロウンカを起源とする累代飼育系統「WBPH2010」と、同程度である(図1)。
  • 上記処理によりSRBSDVを体内に蓄積した各系統のオス成虫を、ウイルスに感染していないイネの幼苗に3頭/株の密度で7日間放飼すると、どの系統を放飼した苗においてもSRBSDVの感染が確認できる(表1)。
  • 以上の結果から、セジロウンカは、SRBSDVの発生が初めて確認された2001年よりも前からSRBSDVを媒介する能力を有していたと結論できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、SRBSDVの媒介はセジロウンカが一般的に有する能力であることを示唆するものであり、国内でのSRBSDVのまん延を防止するためには、今後中国でのSRBSDVの発生状況の把握や、飛来するセジロウンカのウイルス保毒状況のモニタリングにもとづき、その発生リスクを適切に評価する必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進:省力的なIPMを実現する病害虫予報技術の開発)
  • 研究期間 : 2017~2023年度
  • 研究担当者 : 松倉啓一郎、松村正哉
  • 発表論文等 : Matsukura K. and Matsumura M. (2024) Microorganisms 12:1204