促成栽培トマトにおける天敵タバコカスミカメ利用によるタバココナジラミの密度抑制技術の標準作業手順書

要約

トマトのウイルス病を媒介する害虫タバココナジラミを対象として、天敵タバコカスミカメ、害虫忌避剤グリセリン酢酸脂肪酸エステルを主体に化学合成殺虫剤等と組み合わせた総合的防除体系を実践するための標準作業手順書(SOP)。

  • キーワード : 促成栽培トマト、タバコカスミカメ、タバココナジラミ、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、トマト黄化葉巻病、トマト黄化病
  • 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・海外飛来性害虫・先端防除技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

トマトの促成栽培では、害虫タバココナジラミが媒介するトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)とトマト退緑ウイルス(ToCV)によってそれぞれ引き起こされる黄化葉巻病および黄化病が深刻な問題となっている。タバココナジラミは幅広い化学合成殺虫剤に対して抵抗性を発達させているため、殺虫剤に依存しない新たな防除体系の確立が求められている。
促成栽培トマトの栽培期間でタバココナジラミの侵入リスクが高くなる時期のうち、①ウイルス病に感染しやすく被害も大きくなる定植から晩秋の期間は害虫忌避剤と殺虫剤を、②トマト株の生育が進み、感染リスクが低くなる春季は天敵タバコカスミカメを主体とする総合防除体系を確立する。この体系の概要や導入手順・注意点を、実証事例とともに解説したSOPを公開する。

成果の内容・特徴

  • 現地実証試験をもとにタバコカスミカメやバンカー植物の利用方法などを体系化し、それを解説するSOPを作成し、公開している。
  • 本体系では、トマトの定植(9月上旬)後からタバココナジラミの侵入リスクが低下する晩秋(10月下旬)までの期間は化学合成殺虫剤と害虫忌避剤グリセリン酢酸脂肪酸エステル(アセチル化グリセリド)を中心にタバココナジラミの徹底防除を行う(図1)。
  • 晩秋以降に天敵タバコカスミカメをハウスに導入し、バンカー植物としてクレオメおよびバーベナを用いたバンカー法によって温存・維持する(図1および2)。
  • 冬季にハウス内で温存・維持されたタバコカスミカメが温度の上昇とともに増殖し、かつトマトへ速やかに移行して成長点あたり0.5頭以上となることで、春季のタバココナジラミの密度上昇が抑制されるとともに、栽培末期(初夏)までTYLCVおよびToCVの感染トマト株の割合を、収量の低下などの被害を引き起こさないレベルに維持できる(図3)。
  • この体系を導入することで、栽培期間を通じてタバココナジラミの密度を薬剤散布中心の慣行の防除体系と同等以下に抑え(図3)、化学合成殺虫剤の使用回数を低減できる(データ省略)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 促成栽培トマト生産者、JAの指導員、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 関東以南の促成栽培トマト栽培地域。
  • その他 :
    • 本SOPはトマトの大玉品種を対象としている。
    • SOPで解説している天敵タバコカスミカメの利用方法は、特定防除資材(特定農薬)としての利用法であり、天敵製剤(生物農薬)としての利用法ではないことに留意する。
    • 関東以南の都府県ではタバコカスミカメの土着個体群の分布が確認されており、これらの地域では本種を特定防除資材として利用できる。
    • SOPの活用に際しては、都府県の普及員やJAの指導員の指導を仰ぐのが望ましい。

具体的データ

図1 導入技術の体系化(例),図2 バンカー植物上のタバコカスミカメの数(2020~2021年の熊本県での実証試験),図3 トマト上のタバココナジラミ(A)・タバコカスミカメ(B)の密度推移とウイルス感染株率(C)の推移(2020~2021年の熊本県での実証試験)

その他

  • 予算区分 : 交付金、SIP
  • 研究期間 : 2020~2025年度
  • 研究担当者 : 水谷信夫、安部順一朗、田中彩友美、北村登史雄、冨髙保弘、安達修平
  • 発表論文等 :
    • 田中ら(2024)関西病虫研報66:27-36
    • 農研機構(2025)「促成栽培トマトにおける天敵タバコカスミカメの利用によるタバココナジラミの密度抑制技術標準作業手順書」
      https://sop.naro.go.jp/document/detail/189 (2025年7月公開)