ナシ葉退緑斑点ウイルスはナシの退緑斑点症状等の病原であり、ニセナシサビダニによって媒介される

要約

2010年頃から日本各地のニホンナシおよびセイヨウナシで発生が見られる葉の退緑斑点症状や新梢のえそ症状の病原は、フィモウイルス科エマラウイルス属のナシ葉退緑斑点ウイルス(PCLSV)である。PCLSVはニセナシサビダニによって媒介される。

  • キーワード : ナシ、ニセナシサビダニ、フシダニ、媒介
  • 担当 : 植物防疫研究部門・基盤防除技術研究領域・越境性・高リスク病害虫対策グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2010年ごろから日本各地のニホンナシ(Pyrus pyrifolia)およびセイヨウナシ(P. communis)(以下ナシ)において葉の退緑斑点症状や新梢のえそ症状が発生し、収量や品質への悪影響が懸念されているが、その原因は不明であった。これら症状には、フシダニ科の一種であるニセナシサビダニ(Eriophyes chibaensis)の寄生との相関が認められるとともに、また中国から、類似症状を示すナシにおいて新種ウイルスであるフィモウイルス科のナシ葉退緑斑点ウイルス(pear chlorotic leaf spot virus、PCLSV)の感染が報告され、その後PCLSVは日本のナシにも広く発生が認められた。一般的にフィモウイルス科ウイルスはフシダニにより媒介されるが、PCLSVの媒介虫は特定されておらず、防除法の策定が困難であるとともに、これら症状とPCLSV感染の因果関係も不明確である。そこで、ナシ実生苗での実験系を用いた試験により、PCLSVのニセナシサビダニによる媒介性、およびPCLSVの感染とナシにおける退緑斑点症状等の発症の因果関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • PCLSVに感染したニホンナシから採取したPCLSVを体内に保持するニセナシサビダニ個体群を、ニホンナシ・セイヨウナシの実生に接種することで、PCLSV特有の退緑斑点症状が再現されPCLSVが検出されること、PCLSVを体内に保持しないニセナシサビダニ個体群を接種しても同様の事象が起こらないことから、ナシの退緑斑点症状の病原体はPCLSVであり、ニセナシサビダニにより媒介されると結論できる。(図1、表1)。
  • PCLSVが発生しているニホンナシ圃場の樹から採取した、えそ症状を伴う新梢では、発症部位特異的にPCLSVが検出される。保毒虫および無保毒虫を接種したニホンナシ接種苗では、前者にのみ枝の表皮にえそが発生し、発症部位特異的にPCLSVが検出されることから(図2)、PCLSVは新梢のえそ症状の病原でもある。

成果の活用面・留意点

  • ニホンナシおよびセイヨウナシの退緑斑点等症状の病原がPCLSVであること、またPCLSVの媒介虫がニセナシサビダニであることが判明したことから、同症状の防除法の策定、およびその根拠データとして活用できる。
  • 本成果により、本病害の名称は和名 : 「ナシ葉退緑斑点随伴ウイルス」から、「ナシ葉退緑斑点ウイルス」に変更された(日本植物病理学会植物ウイルス分類委員会、2025)。英名もpear chloric leaf spot-associated virus(PCLSaV)からpear chloric leaf spot virus(PCLSV)への変更が提案されている(Takeyama et al. 2026)。

具体的データ

図1 ニホンナシおよびセイヨウナシ実生苗におけるPCLSV保毒ニセナシサビダニまたは無保毒ニセナシサビダニ接種試験,表1 ナシ葉退緑斑点ウイルス(pear chlorotic leaf spot virus;PCLSV)のニセナシ,図2 (AおよびB)PCLSV保毒虫(A)および無保毒虫(B)を接種したニホンナシ実生苗の新梢枝表皮の症状(保毒虫接種苗で壊疽が見られた)、(C)AおよびBで示した表皮サンプルからのPCLSV RNA5の検出

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 竹山さわな、千秋祐也、久保田健嗣、神山光子(熊本県)、上遠野冨士夫(法政大)
  • 発表論文等 : Takeyama, S. et al. (2026) Plant Dis. 110:187-196