要約
水田畦畔におけるマルバアメリカアサガオは、6~7月の出芽個体では到花日数が長く、管理の間隔が1か月以上あいても開花前に防除できるが、8月以降の出芽個体では最短14日のため、管理の間隔を短くする必要がある。適切な管理により畦畔の埋土種子量は1年間で約6%に減少する。
- キーワード : マルバアメリカアサガオ、畦畔、出芽時期、到花日数、埋土種子
- 担当 : 植物防疫研究部門・雑草防除研究領域・雑草防除グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
帰化アサガオ類の1種であるマルバアメリカアサガオは、関東地方の大豆作で問題となる主要な帰化アサガオ類の中でも除草剤の効果が小さい難防除雑草である。本種は畦畔および圃場周辺の農道など(以下、畦畔)にも定着・まん延し、畦畔からつるを伸ばして圃場に侵入し得ることから、畦畔が圃場への侵入源の一つとなっている。畦畔では生産者による雑草管理が行われるが、その管理は作物の栽培暦に合わせて実施されることが多い。本種は短日植物であり、出芽から開花始までの日数(以下、到花日数)は出芽時期によって異なることが想定されるため、栽培暦に基づく管理では圃場への侵入や翌年の発生源となる出芽個体の種子生産を防ぐことができない可能性がある。そこで、本研究では本種がまん延する生産者圃場の畦畔において、慣行の畦畔管理下における同齢集団(cohort、同時期に出芽した個体の集団)ごとの到花日数や種子生産の成否および量と畦畔管理日との関係から、到花日数に基づいた本種の要管理時期を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 調査対象とした茨城県つくば市の生産者畦畔では、圃場内の作目にかかわらずマルバアメリカアサガオの出芽は4月から11月まで続く。そのうち、日長が短くなる8月以降に出芽した同齢集団は最短で出芽14日後に開花に至り、多量の種子が生産するため(表1の青色)、畦畔における本種の種子生産防止には、8月以降の出芽個体をそれより短い間隔で管理ことが重要である。一方、日長が長くなる4月に出芽した同齢集団は最短で出芽32日後に開花に至るので、それより短い間隔での管理が必要である。また、長日条件となる6月、7月に出芽した同齢集団は出芽47日後の管理時点でも開花しておらず(表1の黄色)、6月、7月の出芽個体に対しては管理と管理の間隔が1か月以上あいても種子生産を回避できる。
- 8月に出芽した同齢集団に対する適切な畦畔管理が行われない場合、毎年多量の種子が生産され(表1の青色)、畦畔の埋土種子は維持される(図1-a)が、到花日数期間内である9月上旬に管理(図1の▼)が行われると、種子生産が抑制されて埋土種子量は1年間で約6%に減少する(図1-b)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、マルバアメリカアサガオがまん延する温暖地の畦畔において、本種の防除を目的とした畦畔管理時期の提案に活用される。なお、マルバアメリカアサガオの出芽消長は地域や畦畔管理の時期・方法によって変わり得る。
- 畦畔のマルバアメリカアサガオの防除は、非選択性茎葉処理剤の処理や抜き取りなどで確実に行う。除草剤を処理する際は、畦畔の発生草種に合わせた薬量を処理する。同じ作用機構を持つ剤の連用は、除草剤抵抗性雑草の顕在化や裸地化につながるため留意する。草刈で管理する場合は、刈り残した株の節からの再生を防ぐため、節を残さないように地際から刈り取る。
- 調査畦畔の管理時期や回数は作目によって異なり、年2~4回(6月、8月もしくは6月、7月、9~10月)、グリホサートカリウム塩48%液剤の処理または草刈による畦畔管理が行われている。調査畦畔には、マルバアメリカアサガオの他スギナが発生しており、その防除も行うため、グリホサートカリウム塩液剤は多年生雑草に対する登録薬量(200~1000mL/10a)の最大薬量を処理している。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発 : 多収阻害要因の診断法及び対策技術の開発)
- 研究期間 : 2015~2023年度
- 研究担当者 : 井原希、小林浩幸
- 発表論文等 : Ihara N. and Kobayashi H. (2022) Agronomy 12:2392
doi:10.3390/agronomy12102392