安全、簡単、確実な無機系コンクリート補修材料の現場付着試験方法

要約

直径45mmの円形付着ジグとコアドリルを用いた、コンクリートと無機系補修材料との付着力を測定する現場試験方法である。試験結果に影響しやすい切込み作業が容易となり、作業者の技量によらず現行の試験方法と同等の結果が得られる。

  • キーワード:コンクリート構造物、無機系補修材料、付着、現場試験
  • 担当:農工研・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農業用コンクリート構造物の補修工法の1つである表面被覆工法には、補修後に補修材料が躯体コンクリート(母材)から剥離しないこと(付着性)が求められる。付着性を確認するために、補修後の完成検査や現場モニタリングなどで現場付着試験が行われている。現行の現場付着試験では、40mm×40mm(□40mm)の角形の付着ジグを補修材料表面に接着し、現場用の引張試験器で付着力を測定する。その際、ジグ周りに正確な切込みを入れることが必要とされ、作業者の技量やノウハウに頼っている現状がある。
そこで、本研究ではこれまで室内試験に使われてきた円形ジグを現場試験に適用し、作業者の技量に試験条件が影響されにくく、容易かつ安全な試験方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 本試験方法と現行の試験方法との主な違いは、接着面が円形(φ45mm)の鋼製付着ジグとコアドリルを用いること、また、切込みを入れた後に付着ジグを接着することである。試験位置の清掃や引張試験器による引張載荷などは現行試験方法と同様である(図1)。
  • 切込み作業に円形のコアドリルを用いることで、試験面積や切込み深さが作業者によらず一定となる。またコアドリルの溝幅が比較的大きいことから、母材到達の目視確認が容易となる。切込み後はゴムリングによって付着子を固定することで、接着剤の硬化養生中のずれや落下を防止できる(図1a)。
  • 得られる試験値(付着強さ)は付着ジグの大きさ(試験面積)に依存する(図2)。本試験方法ではφ45mmの付着ジグを用いることで、現行試験方法と同等の試験値が得られる。これによって、複数年にわたって実施される現場モニタリングにおいて、現行試験方法と本試験方法との試験結果の連続性を保つことができる。
  • 本試験法によるコアドリルを用いた切込みは、コンクリートカッターに比べて粉塵の飛散が少なくなる。また、切込みの形状が井桁状でなく環状となるため、試験後の補修範囲が拡大しない。さらに、試験跡の補修時、円形ジグはコア採取後の補修と同様に補修材を充填できるため、作業性と仕上りの景観性にも優れている。

普及のための参考情報

  • 普及対象:全国の農政局、調査を受注する民間会社。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:対象は全国の無機系表面被覆工法で補修されたコンクリート構造物(例:基幹的水路4万km)。
  • その他:本試験方法では現行の引張試験器を用いることができる。また、専用径のコアドリルや円形ジグは市販されているコアドリルや従来の角形付着ジグとほぼ同価格である。なお、本試験方法の適用について、有機系補修材料に対しては未検証である。

具体的データ

図1a 引張試験前までの現行方法(青色)と本試験方法(赤色)の概要,図1b 引張試験以降での現行方法(青色)と本試験方法(赤色)の概要,図2 現行方法(横軸)と本試験方法(縦軸)との付着強さの比較

その他

  • 予算区分:交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:川邉翔平、金森拓也、森充広、高橋良次、中嶋勇、緒方英彦(鳥取大)、加藤諭(鳥取大)、八木澤康衛(サンコーテクノ)、金子英敏(サンコーテクノ)、清水邦宏(サンコーテクノ)、吉岡直輝(サンコーテクノ)
  • 発表論文等: