頭首工エプロンに使用する土木材料の耐衝撃性を評価する鋼球落下式衝撃摩耗試験

要約

頭首工エプロンに使用する土木材料の耐衝撃性を評価する試験方法である。試験面を水平から10°傾けて150mm角の立方体供試体を設置し、高さ1mから質量1,041.7gの鋼球を自由落下させ、その衝撃によって削られる深さを求めることにより、複数の土木材料の耐衝撃性を相互比較できる。

  • キーワード : 頭首工エプロン、耐衝撃性、鋼球落下、最大摩耗深さ
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

全国に存在する約2,000箇所の頭首工のうち3割以上が耐用年数を超過しており、補修による施設の長寿命化対策が進められている。頭首工下流の河床部の洗掘防止のために設置されるエプロンの補修・補強に使用される土木材料には、砂礫の流下による掃流や、転石による衝撃に対する耐久性が要求される。本研究では、このうち、転石による衝撃に対する土木材料の耐衝撃性を照査する試験装置および試験方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 鋼球落下式衝撃摩耗試験装置の概要を図1に示す。装置は、天板、4本の支柱、支柱補強板、塩ビ管ガイド、供試体を固定する設置板(材質:一般構造用圧延鋼材SS400)とフラットバーから構成される。供試体表面から高さ1mの場所に天板を設置し、天板から塩ビ管を通して人が鋼球を自由落下させる。
  • 試験に供する供試体は、耐衝撃性を評価する土木材料単体で作製した150mm角の立方体を標準とする。落下させた鋼球が供試体に当たって跳ね返り、再び供試体に衝撃を加えることを防ぐため、供試体は水平面から10°傾けて設置し、フラットバーで固定する。この状態で、天板から鋼球を自由落下させ、その衝撃によって供試体を欠損させる。使用する鋼球は、入手性を考慮し、高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)、直径の呼び径2-1/2(63.5mm)、質量1,041.7gの規格品を標準とする。
  • 湿潤状態で試験を行うため、供試体は試験の48時間前から23±2°Cの水中に浸漬し、取り出して1時間以内に試験を開始する。落下回数10回ごとに、衝撃によって生じた破片を清掃するとともに、霧吹きで供試体試験面に水を拭きかけて湿潤状態を保持する。鋼球の落下回数は、最大500回までとし、途中、少なくとも50、100、300回の時点で供試体を取り外し、供試体の質量および鋼球による欠損部の最大深さ(以下、最大摩耗深さ)を求める。最大摩耗深さは、欠損していない平滑面を基準とし、その平面から欠損部の最深点までの距離とする。目視で欠損部の最深点を抽出し、その点を通る縦、横、斜めの4断面で表面形状をレーザー距離計で測定することによって求める(図2)。
  • 圧縮強度の異なる3種類のコンクリートを対象とした試験結果(供試体数n=2)の一例を図3に示す。コンクリート供試体では、粗骨材の剥離等の影響で値がばらつく傾向があるが、コンクリートの圧縮強度が大きいほど、最大摩耗深さは小さくなる。
  • 試験に供する土木材料が板状であり、150mm角の立方体を作成することが難しい場合は、コンクリートで嵩上げし、高さを150mmに調整した供試体を用いることができる。例として、厚さ30mmの花崗岩をコンクリートの強度が29.0N/mm2、40.5N/mm2、57.2N/mm2の3種類で嵩上げした場合の結果を図4に示す。この図から、嵩上げコンクリートの強度によらず、花崗岩の最大摩耗深さは7.1~8.4mmの間に収まり、嵩上げコンクリートの強度が耐衝撃性試験の結果に及ぼす影響は小さいことが確認できている。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 頭首工の更新、補修を行う行政部局、また補修材料を開発するメーカー、補修工法を開発する建設業者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 頭首工エプロンの補修・補強工法の設計や施工を行う地区において、適用材料の耐衝撃性を照査する品質評価法としての普及を予定している。
  • その他 : 耐衝撃性を評価した土木材料の摩耗量を現地で計測することにより、鋼球落下500回後の最大摩耗深さと供用年数との対応について検証が必要である。

具体的データ

図1 鋼球落下式衝撃摩耗試験装置,図2 最大摩耗深さの計測方法,図3 落下回数ごとの摩耗状況およびコンクリート強度と最大摩耗深さの関係,図4 嵩上げコンクリートの強度の影響

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 森充広、中嶋勇、川邉翔平、金森拓也、後藤秀樹(NTCコンサルタンツ(株))、和田清男(NTCコンサルタンツ(株))、熊澤明(NTCコンサルタンツ(株))、都築章宏(NTCコンサルタンツ(株))、今井聡(NTCコンサルタンツ(株))
  • 発表論文等 :
    • 森ら(2022)コンクリート年次論文集、44(1):352-357
    • 森ら(2023)農業農村工学会論文集、91:I_11-I_19