圃場整備前後における適切なドローンセンシングのタイミング

要約

圃場整備の実施に合わせて、整備直前・直後の稲作付けの出穂期、表土整地の直後、客土や暗渠施工など基盤条件を大きく変化させる工事時など、適切なタイミングでドローンによるセンシングを実施することにより、営農・維持管理に活用可能な有用な農地基盤データが取得可能である。

  • キーワード : ドローン、圃場整備、三次元データ、農地基盤、生育ムラ
  • 担当 : 農村工学研究部門・農地基盤情報研究領域・空間情報グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

区画整理や土層改良などが実施される圃場整備は、農地の基盤条件が大きく変化する機会である。整備前の農地の区画内の条件の違いや、整備期間中の施工履歴や三次元データなどを、以後の営農や維持管理に引き継ぐことが出来れば、整備の効果はより高まる。一方で、整備前や整備期間中の事象は、機会を逃すと取得が困難なデータでもあり、適切なタイミングで取得する必要がある。
そこで、本研究では圃場整備前の作付けから整備後の作付けまでの期間に、工事の進捗に合わせて適時、計13回のドローンによるセンシング調査を実施し、得られた空撮画像データを解析することにより、有効な撮影のタイミングと得られるデータの活用方法について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 圃場整備前後のドローンセンシングのタイミングについては、表土整地などの基盤整地の直後、整備直前直後の稲作付けの出穂期、客土や暗渠施工などの基盤条件を大きく変化させる各種工事直後のタイミングの3つが有効である(図1)。
  • 表土整地直後に撮影した画像データから作成した三次元データからは、植生繁茂や経年変化の影響を受けていない圃場の進入路・畦畔などが明瞭に把握可能であり、以後の農地基盤の変状を把握する上での基準データとすることができる(図1:撮影時期⑤)。
  • 整備後に作付けした水稲の出穂期に撮影した画像データからは、整備後の生育ムラの把握が可能である(図1:撮影時期⑦、⑬)。撮影時期⑦の画像は、近赤外域を含むマルチスペクトルカメラを用いて撮影・算出したNDVI(正規化植生指数)画像データ、撮影時期⑬の画像は、通常のカメラで撮影したRGB画像データである。
  • 図2は、圃場整備実施地区(B地区)における整備時の切盛土高と整備後の出穂期のNDVI画像を示している。整備時の切土・盛土が整備後の稲の生育に影響を及ぼしていることが確認できる。整備後の出穂期に撮影した画像データを用いることにより、整備の影響による生育ムラを、施肥量の調整などの対策により速やかな解消に繋げることが可能となる。
  • 暗渠排水施工時の画像データからは、整備後、地上から目視での確認が困難となる暗渠の施工位置などの記録が可能である(図1:撮影時期⑨)。

成果の活用面・留意点

  • 圃場整備事業を実施予定の地区の事業担当者、土地改良区職員等が活用できる。
  • 得られたデータは、整備後の対象圃場の営農や管理の主体と共有することで、営農や維持管理に活用できる。
  • 三次元データ等の作成には、SfMソフトウェアによる解析や三次元データクラウドサービスなどの活用が必要である。

具体的データ

図1 A地区における圃場整備の流れとドローン撮影時期及び取得データ,図2 B地区における整備時の切盛土高と整備後の出穂期のNDVI画像

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 栗田英治、篠原健吾
  • 発表論文等 :
    • 栗田、加藤(2021)農業農村工学会誌、89(1):7-10
    • 栗田(2020)農研機構技報、5:18-21