農業農村整備におけるデータ利活用を促進する農地基盤デジタルプラットフォーム

要約

農業農村整備事業で得られた農地基盤に係るデータを一元的に管理し、様々な機能を有するアプリケーションソフトや他のシステムと連携することにより、多様なユーザーが農地や水利施設の維持管理や営農等に農地基盤のデータを利活用するためのデジタルプラットフォームである。

  • キーワード : 農業農村整備事業、デジタルプラットフォーム、情報化施工技術、データ利活用
  • 担当 : 農村工学研究部門・農地基盤情報研究領域・農地整備グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

農業農村整備事業において、建設現場の労働生産性向上や労働環境の改善を図るため、3次元設計データやICT建機を用いた情報化施工技術の普及が求められている。また、整備後の維持管理を行う土地改良区職員が減少していることから、情報化施工技術によって得られる設計および出来形の3次元データや画像データ等の利活用を促進し、農地や農業水利施設の維持管理や再整備、さらには営農面において省力、効率化を図る技術が不可欠となっている。
本研究では、農業農村整備事業によって得られたデータを一元的に管理でき、整備やその後の維持管理に係る多様なユーザーが適切なデータ利活用を図るための機能を有するデジタルプラットフォームを構築する。また、データの利用度や価値を向上させるアプリケーションソフトや他のシステムを繋げるインターフェースであるAPI(Application Programming Interface)を備えることで、農業農村整備事業に係るプロセス全体においてデータの利活用を促進する。

成果の内容・特徴

  • 農地基盤デジタルプラットフォーム(略称:NNDP)は、ほ場整備等の調査、設計、施工時における情報化施工技術によって得られる3次元データやドローンによる画像データなどを一元的に管理する(図1)。また、それらを共有するためのファイル管理機能やGISによるビューア機能、ユーザーのIDやアクセス管理ができる認証機能や、ユーザーの属性に応じて適切なデータの管理、編集、閲覧ができる権限管理機能を有している。
  • ユーザーは、管理者、編集者、閲覧者に分類され、ファイルを管理する際の権限がそれぞれ異なる。データ共有の単位となる工区を管理者が作成し、工区ごとに管理者がユーザーに権限を付与して招待することで、関係者間でのセキュアなデータ共有が可能となる(図2)。なお、ファイルをアップロードする際のファイル形式の制約はなく、自由なファイル共有が可能である。
  • GIS上で閲覧するビューア機能で対応可能なファイル形式は、LAS、GeoJSON、J-LandXML等である。また、ビューア機能では点群データの2時期の標高比較が可能である。これによって、整備前後の差分による盛土・切土マップを作成することで、効率的な肥培管理や土砂災害前後の差分による被害状況の把握、土量の推定による迅速な災害復旧などが期待できる(図3)。
  • NNDPは、API連携によって農地管理、暗渠施工管理、施設管理などのアプリケーションソフトのデータや一部の機能を活用でき、今後民間などの外部のアプリケーションソフトとの連携も可能である(図1)。農地管理アプリでは、API連携によって土地改良区が管理する水土里情報システムと農業データ連携基盤WAGRIのデータが得られ、NNDPのビューア機能を活用することで、各システム上で管理する筆ポリゴンのレイヤー表示や差分表示ができ、農地区画情報の迅速な把握や更新作業の省力化ができる(図4)。また、区画面積の色分け(ヒートマップ表示)や農地率の算出が可能である。
  • 暗渠排水の3次元位置情報を取得する暗渠施工管理アプリとのAPI連携では、NNDPによるファイル管理機能や権限管理機能等を活用した農家や土地改良区等とのデータ共有によって、位置情報を活用した効率的な排水改良や暗渠機能の長寿命化、再整備の低コスト化が図れる。同様に、施設管理時の情報を共有する施設管理アプリでは、土地改良区による適切な施設の維持管理が図れる。このように、NNDPを通じて、農地や農業水利施設に係る様々なユーザーが、維持管理や再整備等のプロセスにおいてデータを有効活用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 農業農村整備事業に係る国や県、市町村の行政職員、土地改良区、農業土木コンサルタント会社、担い手農家。
  • 普及予定地域:情報化施工技術に取り組む事業地区。
  • その他 : 次年度以降、農業インフラデジタルプラットフォームとAPI連携を図り、農業施設全般とのデータ利活用を実現する予定。

具体的データ

図1 農地基盤デジタルプラットフォームの概要,図2 工区の作成とユーザー管理による権限設定,図3 被災前後の点群データの標高比較,図4 農地管理アプリによる区画情報の表示

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(国際競争力強化技術開発プロジェクト:革新的スマート農業技術開発)
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 若杉晃介、松本宜大、宮本輝仁
  • 発表論文等 : 若杉(2021)農業農村工学会誌、89(10):3-6